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のび太は途方に暮れていた。 何故その様になったのかは、一ヶ月前に遡る。 あの頃のび太の町内ではポケットモンスター金銀が流行っていた。 子供達はポケモンに熱中し、それを育て、最終的にはポケモンの強さが一種のステータスになるようにもなった。 ある日一人の大柄な体格のガキ大将がある一言を呟き全ては始まる 「俺たちポケモンの世界に入れたらいいのにな」 少年達はそれに共感し賛同した。普通なら考えられない事だが、幸いこの町内には何でも叶えてくれる猫型ロボットがいる。 そして猫型ロボットのチカラにより町内中の子供達の願いは叶えられた。 それによって町内の子供達の大半がポケモンの世界に入る事になった。 もちろんその中には例外なくのび太少年も参加していた。 最初のポケモンはケーシイ。 悪くないポケモンだったが最初に貰うポケモンとしては悪かった。「テレポート」ばっかりで、逃げる事により先には進むが経験値が入らない 無論ジムバッジなど一つも持っている筈がなかった。 しかし進む速さは驚異的で、今、彼は一番乗りでタンバシティにいた。 のび太「あ~あドラえもん酷いよ。八つのジムバッジ集めないと現実に戻れない(設定上のルール)なんて~ ドラえも~ん(泣)」 今、ポッポもいるが、うまく弱点を突いたとしてもシジマに勝てる筈がない。ハヤトにだって怪しい。 のび太はまた泣き出した すると、 「パサッ」 そこに一冊のノートが落ちてきた。 突如空から降ってきたノート。 いくらのび太がマヌケでもそれに気付かない筈がない。 のび太「なんだ?これ?」 のび太はその黒いノートを開き、パラパラとめくった。すると目次欄には優しい日本語であることが書いていた のび太「なになに……? このノートに名前を書かれた人はしにます。でもしなせる為には、その人のゲーム中の名前(ほんとうの名前を書くひつようはありません)と、顔と手持ちのポケモンをしっていなければいけません。 名前を書かれた人は40秒あとに心ぞうのびょうきでしにます……どっかできいたことあるなぁ…… またスネ夫辺りのイタズラかな?」 そう思ったのび太だったがやはり好奇心が生まれてき、ノートを試したくなった。 のび太は適当に目の前を泳いでいるさっき負けてこづかいを取られた海パン野郎の名前を書くことにした。 のび太「ええと、タツヤ ポケモン・タッツー、シェルダー。 これでいいのかな?」 しかし海パン野郎は何事もなく泳いでいた。 のび太「なあんだ。やっぱりイタズラじゃないか。」 のび太がそう呟いた瞬間だった。 「ウウッ!!」 突如海パン野郎が胸を押さえて苦しみだし、そのまま海に沈んでいった。 のび太は状況を呑み込めず一目散に逃げ出した。 小脇にノートを抱えながら 数日後のび太はポケモンセンターに居た。 のび太「ふうっ。」 のび太は一息つき、ベッドに寝転んだ。手にはノートがある。そのノートには、人とポケモンの名前がびっしりと書いてあった。 初めはのび太はこのノートに恐れを抱いていた。二度と使うまいと思った。 しかし、何度もトレーナーに絡まれ、財産を巻き上げられていくうちに、必要に迫られ、また何度か使ってしまった。 最初は「なんてことを……」と、自己嫌悪を抱いたが、所詮はゲーム中のキャラ、僕はバイオとかでそれ以上のことをしてたじゃないかと、自己の中で正当化された。 そして人の名前を書き続け、ノートはのび太に無くてはならない存在になった。 のび太にはもしかしたら現実に帰れるかもしれないと希望の表情が見え始めた。 しかし、ポケモンセンターに忍び寄る影があることをのび太は知らなかった。 のび太がこれから先の妄想にふけっているとき、後ろで 「派手に殺ってるようだな」と声がした のび太「誰だ!?」 後ろを向いたが誰も居ない。のび太が気のせいか、と思い忘れようとしたとき、目の前に大きな影が広がった。 のび太「うわあぁぁぁぁ」のび太は大きな声で叫んだつもりだったが声が出なかった。 影は変形を始め、あるポケモンの形になった のび太「ゲンガー……?」 ゲンガー「ほう、俺を見たらビビって心臓止まると思ってたが成長したようだな」 のび太「最初から……?」 不可解な目の前のポケモンの言葉にのび太は無意識に呟いた ゲンガー「ああ、お前がこの世界に来たときから見ていたさぁ。 ヘタレでドジでマヌケで、名前はのび太くんだっけか?ノートのお陰で精神的に成長したか?いや、心がすさんだと言った方がいいかな」 ゲンガーは馴れ馴れしく言った。 のび太「と、いうことはこのノートは君の……取り戻しにきたのかい?」のび太は恐る恐る訊いた。 ゲンガー「とぉーんでもない!そいつはバカでノロマでオッチョコチョイのお前へのプレゼントさ。 そいつは遣るよ」 のび太「僕へのプレゼント……」 プレゼントとは言われたものの、のび太は気になった事を聞いてみた。 のび太「ノートの代償は……代償はないの?使ったら寿命が縮むとか……?」 ゲンガー「ぎゃはははは!ゲームで寿命が縮むわけねぇだろwww まあ、代償というか条件だな。それと俺の頼みをひとつ聞いてくれないか?」 のび太「た、頼み?」のび太はゾッとしたが、ゲンガーの頼みは安いものだった。 ゲンガー「俺を手持ちに入れてくれ。」 のび太「な、何で…」 ゲンガー「言ったろ。俺はお人好しなんだ。お前の事が気掛かりなんだ。」 のび太「条件はなんなの……?」 ゲンガー「お前の力量を見せてくれ。うーん。ま、手始めにタンバの格闘親父でも倒してくれや。見事倒せば手持ちとして加えさせて貰う。」 のび太「そんなこと……」 ゲンガー「安心しろ。お前にはノートが有るだろ。うまくやってくれよキシシシ」 のび太はどうしたものかと考えたがケーシイとポッポだけのパーティーにゲンガーが入ってくれれば心強い。 のび太は何とかしてみようという気持ちになってきた。 そして のび太「わかった。やろう」 ゲンガーはしめしめといったかおつきでニヤけていた。 夜遅くシジマのジムに丸眼鏡の冴えない少年が来た。 少年は最初「このジムであなたが使うポケモンは何匹ですか?」 と聞いてきた。 わりと普通の質問だったし、ジムリーダーが使うポケモンの数はジム毎で決まっていたので 「2体だ」 と、正直に答えた。 その後ジム戦が始まり、少年はポッポを繰り出してきた。自分はオコリザルを出し、彼のポッポを二秒で瀕死にさせた。明らかにレベルの差は歴然だった。直後彼は投了し、ジムを去った。 しかしその後の少年の行動が奇妙だった。 彼を叩きのめしたあとまた、すぐにジムに挑戦してきたのだ。 当然また、ポッポを瞬殺し、彼はまた、投了を告げた。 彼はまた幾度も幾度も来た。 強さも全く変わったとは思えなかった。 再戦を申し込むトレーナーは数多くいたがこの様な、トレーナーは始めてだ。 今度負けたら一緒に24時間特訓に付き合わせ懲らしめようと思ったとき、彼がまたやってきた。 いつもの様にオコリザルでポッポを叩き潰そうとしたとき、物凄い風が吹いてきた。ポッポの「ふきとばし」らしい 自分のポケモンは強制的に替えられ、ニョロボンがでた。 すると少年はニヤリと不気味に笑い、ノートに何かを書き始めた。 「何してるんだ?」 と私は訊いた。 すると丸眼鏡の少年は何かを書き終わったあと 「残念ですね。 僕の勝ちだ。」 と言った すると私は急に胸に圧迫感を覚え、苦しくなり、その場に倒れた。体も動かない。真夜中だから弟子も誰も居ないだろう 薄れゆく意識の中で、「なかなか、ポッポにせんせいのツメを持たせて、先手を取るのは苦労したよ。あっ、これがバッジだな。やったーゲットー。」と少年が言っていたが、私はよく聞き取れずそのまま意識を失い、二度と覚める事はなかった。 後日、のび太とゲンガーは人の目に付かない岩場で話していた のび太「シジマ、無理な特訓中に突然死だってね。ノートによる殺人だとバレないでよかったよ。」のび太は安心した様子で言った。 のび太「それに頼もしい仲間も手に入ったしね。」と言い、チラリとゲンガーを見た。 のび太はゲンガーのお陰で連戦連勝、ケーシイやポッポを出し戻しする事でそいつらのレベルも上がった。 今、のび太は全て順調なのである。 ゲンガー「のび太、ちょっといいか?」 のび太「なに?」 ゲンガー「俺とノートのことだがな、実はゲーム中に起こったバグだ。」そのくらいのび太でも薄々感付いていた。ゲーム中に登場人物が死ぬなんて普通有り得ない。 のび太「まあ、なんとなくわかってたけどね。」 ゲンガー「話は最後まで聞け。俺はバグポケモン。だから、普通のポケモンとは少し違う。何が違うかというと、俺は通常の戦闘では全く経験値は得られない。」 のび太「じゃあどうやって君を育てるのさ?」 ゲンガー「ノートさ。ノートに名前を書き込むんだよ。すると書かれた奴の持っているポケモンの経験値が全て俺に入る。即ち……」 のび太「ノートに名前を書けば書くほど強くなる……」 ゲンガー「そういうことだキシシシ」 のび太がゲンガーの言葉に息を詰まらせているとき、のび太のポケギアが鳴った。ドラえもんからだった ドラえもん「のび太君、皆と話たい事があるんだ。タンバのポケモンセンターに来てくれる?」 のび太「良かった。ちょうど近いんだ。いますぐいくよ。」 ちょっとそこで会話に間があった。のび太がもうタンバまで行っていることに驚いているらしい。 ドラえもん「なるべく早くね!!!」そこで電話が着れた。 のび太「何かなあ?話って。」 のび太は首を傾げた。 ゲンガー「さあな。」 のび太「とにかく行ってみよう。」 のび太はポケモンセンターに向かった。 自分がどれだけ浅はかな事をしたのか気付かずに…… 20分後、のび太はタンバのポケモンセンターにやってきた。 そこにはやす夫、はる夫、出木杉を除く全員が来ていた。 ドラえもん「あっ、のび太君やっときたみたいだね。君が最後かな?」 スネ夫「のび太が此処までこれるなんて以外だね」と、スネ夫が皮肉を言ったがのび太は無視した。 のび太「やす夫君とはる夫君と出木杉は?」のび太は訊いた。 ドラえもん「彼らは先にチョウジの方に行ったからね」 のび太「なるほど」 ジャイアン「っていうかさー、なんで俺たちをこんなとこに呼び出したんだよ!」とジャイアンはかなりイライラした口調で言った ドラえもん「それなんだけどね……」 ドラえもんは暗い様子で言った ドラえもん「問題は二つあるんだ。一つ目は、ここ、タンバのジムリーダー、シジマが死んだんだ。」 のび太はドキリとしたが顔に表情は表れなかった。 のび太「それがどうかしたのかい?」 ドラえもん「そこが問題なんだ。何故かというとシジマが死んでしまってるから、ジム戦ができない。皆ここに来たばっかりだから当然誰もジム戦はしていない。だからもう誰もバッジを八個集めるというクリア条件を満たす事が出来なくなったんだ。」 スネ夫「と、いうことは………」 しずか「もう現実世界に戻れない……!」 しずかの一言にそこにいた全員が口をつぐんだ。しかし ドラえもん「そんな訳じゃない。シジマは心臓麻痺で死んでたけど、誰かと戦った跡がある。それに遺体からはバッジが抜きとられていた。 要するに誰かがバトルじゃ勝てないから何らかの方法でシジマを殺して、バッジを奪った。そのバッジを持っている誰かがいる可能性があるってこと。そんな登場人物が勝手に死ぬなんて設定は無いしね」 スネ夫「ということは現実世界には帰れるんだね?」 ドラえもん「バッジが見つかればね。もし、このなかでショックバッジを持っている人がいたら言ってほしい。即座に電源を切りゲームを中止するよ。一人でも外へ出て電源を切れば皆無傷で現実世界に帰れるから。」 大変な事になった。そうのび太は思い、正直にショックバッジを渡そうとした。 何かを喋ろうと口を開こうとした瞬間、 のび太「?」 のび太の口と手は麻痺したかのように動かなくなった。 のび太はさらに力を入れてみた。全く動かない。まるで「かなしばり」にあったように。 するとのび太の後ろにいたゲンガーが(ゲンガーの条件にモンスターボールに入れないというのがあった)話しかけてきた ゲンガー「話は最後まで聞こうぜ。まだ、第二の話が残ってるだろ。キシシシ ちなみに俺との会話、及び意思疎通はノートに触れた事がない限り出来ないから安心しろ」 ドラえもん「いないようだね。それじゃ仕方ない。第二の話に入るよ。」 しずか「第二の話?」 ドラえもん「この話はもっと落ち着いて聞いてほしい。先月の話なんだけどね。タイム・パトロールが四次元空間で重罪人を追っていたんだ。その途中男はタイムマシンから飛び降り次元の狭間に飛込んだんだ。 そしてその男が飛込んだ時代が……」 スネ夫「現在……だね?」 ドラえもん「そう。この時代だと異次元空間を作ってるのは僕らくらい。そいつが紛れ込んでいる可能性は十分にある。 この世界では死んでしまったり怪我してしまっても機械を壊すスイッチを切るなどすれば問題なかったがもし犯人が脱出条件を知って、脱出出来たやつがそいつ一人になると話は別。 奴は僕らの口を塞ぐため、スイッチを入れたままにするだろうから、僕らは二度と元の世界に帰れなくなる!」 のび太は話を聞き話はよく分からなかったが自分の言動を阻止しているゲンガーは何かドラえもんが言った事に関連してるかも知れないと感じた。 のび太「ドラえも~ん(泣)助けて~」 しかしそれは声にはならなかった。 ドラえもん「シジマを殺したのがこの中の誰でもないとすると僕の考えでは間違いなく時間犯罪者だと思う。」これをのび太が聞いた瞬間、ゲンガーが言った ゲンガー「のび太よ。いいことを教えてやろうか」 のび太「?」 ゲンガー「俺がその時間犯罪者だ。何故そんな体になったかは分からんがな。」 のび太「?」のび太の体に恐怖が走った。 ゲンガー「この体になったのは便利だったよ。さいみんじゅつとかあるしなー。キシシシ」 のび太「あっあっあ」 ゲンガー「ビビるな。俺もお前を殺しはしない。ちょっと体を借りるだけだ」 のび太「からっからっからっ」 ゲンガーの目が光った。それからのび太の意識はブッ飛んだ。 ドラえもん「だから、時間犯罪者がバッジを全部集める前にそれを阻止しなきゃならない」 ジャイアン「全面戦争か……燃えるな」 スネ夫「僕もう帰りたいよ……ママ」 しずか「これからどうしましょう」 すると、さっきまで黙りこくっていたのび太が口を開いた。 のび太「とにかく時間犯罪者と戦うためには、今の戦力を確認しておいた方がいいよ。」 ドラえもん「なるほど。じゃあみんなポケモンを出そうか」 のび太「僕が紙にメモしてあげるよ」 のび太はノートを破りペンを出した。 他の皆はもっていたポケモンを繰り出した 「キシシシ。こいつら馬鹿だ」 のび太、もといゲンガーに操られたのび太(次からのび太と表記します)はそう思った。 のび太「ええとしずかちゃんはベイリーフ、マンタイン……… ジャイアンはオーダイル、ストライク、ゴーリキー、………… スネオはマグマラシ、スリーパー、オオタチ…… ドラエモン、ヌオー、モココ、エイパム……これでいいかな?」 のび太はノートにポケモン、名前を全て書き込んだ。 ばかめ。青狸。これでテメーらは一瞬で全滅だ。 あとはデキスギとかいうやつがバッジを集めたら、待ち伏せて殺して奪ってやる。 そして脱出。まだタイム・パトロールなど出来てない時代だ。奴らも大っぴらに動けんだろう……。 それよりドラエモン……もう少し楽しませてもらいたかったぜ。キシシシ…… のび太が名前書いてから36…… 37…… 38…… 39…… 40 「バタッ」 人の倒れる音がした。 倒れたのはしずかだった。 「うぐぐぐぐぐ」 倒れたしずかは胸を押さえて苦しがっている。 ドラえもん「しずかちゃん!!!!」 ドラえもんは即座に「お医者さんカバン」を出したが、もう手遅れだった。 キシシシ。次はテメーらだ。のび太は心の中でそう笑った。 38……… 39……… 40……… ………………!? おかしい。誰も死なないのだ。何故この様になったのかのび太は思考をフル回転させた のび太『まさか……偽名……!!』 有り得ない事ではなかった。 何故ならこれはゲームの世界だ。主人公の名をマンガの名前や自分の名前のアナグラムなどをしてても不思議ではない。 特に「ジャイアン」など本名であろう筈がない。大方残り二人は名字や名前の略でも使ってるのであろう のび太『しまった……』のび太はそう思った。 とにかく他の奴が死ななかった今、早く次の手をうたねばならない。 そのためには今、完全に「のび太」として振る舞わなければならなかった のび太「しずかちゃん!!なんでしずかちゃんが!しずかちゃ~~ん!!!!!」我ながら完璧な演技であった。 ドラえもん「のび太君!!多分時間犯罪者の攻撃だ!早く逃げるぞ」 のび太「うっうっうっうっ」 ジャイアン「なにやってんだ!のび太!!早く逃げるぞ!」そう言いジャイアンはのび太をおぶりポケモンセンター内部に逃げ出した。 ここでもスネ夫は失禁し、この後ほっとかれ干からびかけた、しずかのマンタインがそれのお陰で九死に一生を得るのだが、主人が死んだ今、それはもうどうでもいいことであった。 ドラえもん達はしずかの死亡現場から離れ、タンバのポケモンセンターの一室にいた。 ジャイアン「チクショウ! なんでしずかちゃんを……」 のび太「うっうっうっうっ」 ドラえもん「皆!落ち着いて……。」と、ドラえもんが場をなだめようとした。しかし、目の前で人がしかも身近な人が死んだショックでスネ夫はもはや発狂寸前だった。 スネ夫「いっいやだみんなしぬいやだああっあっあっ そうだこれは夢だ。夢の中の自分だ。こいつをころしてげんじつのぼくをとりもどそう。」 不意にスネ夫は果物ナイフをとり、自分の手首をかききろうとした。 その瞬間だった。ジャイアンの鉄拳がスネ夫の顔面に炸裂した。 ジャイアン「なにやってんだ!スネ夫!! ドラえもんの話を聞いてなかったのか!? 今、ここで俺達が死んだら、しずかちゃんも死んだままだぞ!!」 殴られた後、スネ夫は我に帰り、はっ、とした様子でジャイアンを見た。 そして スネ夫「ごめん……」と、一言だけ言った。 ジャイアン「のび太もいつまでもめそめそしてんな!!」ジャイアンが激を飛ばした のび太「うん……」 のび太は力なく返事した。 その言葉には別の邪悪な感情が宿っていたようだが。 ドラえもん「皆落ち着いたようだね。 今からこれからの事を言っていくから。」 全員がうなづいた。 ドラえもん「まず、しずかちゃん死因だけど、お医者さんカバンで調べた結果、原因不明の心臓麻痺だった。 周りから攻撃の気配は全くなかったし、ポケモンの技で考えられるのはゴーストの「のろい」が有るけど、それは、体力を削るだけで、あんな急速に生命に危険を犯す程ものではないはず。 石ころ帽子で近付いていって攻撃したり、毒を注射したなら、お医者さんカバンで死因が出るしね。 この事からしずかちゃんやシジマを殺した犯人は、ある能力を得ている可能性がある。」 スネ夫「それはいったい……?」スネ夫が訊いた。 ドラえもん「わからない……ただその、それは、ある条件下の人間を殺すことの出来る力だと思う。」 ジャイアン「なんでそんなことが分かるんだ?」 ジャイアンは首を傾げた ドラえもん「あの時僕らはスキだらけで全滅させようとしたらいつでも出来たと思う。 だが何故奴はそれをしなかったか? 僕らは生きてても奴にとってなんのメリットもない。だから、奴は当然僕らを皆殺しにしようとする。しかし奴の計画に反してしずかちゃんしか死ななかった。 何故なら僕らの中でその殺しの条件をを満たす人物がしずかちゃんしかいなかったから。」 スネ夫「むちゃくちゃだ!!! それに、僕らが生きてるのだって、ジムバッジを集めさせるためかも知れないじゃないか!」 ジャイアン「話しは最後まで聞け」 ドラえもん「いや、可能性の一つとしてだよ。いや、そうでなければ説明出来ない。 もし、僕らにジムバッジを集めさせてから一網打尽にするなら、あそこでしずかちゃんを殺す必要が無い。 人数が少なくなって、僕らがバッジを集められる可能性が減るし、殺しの能力を見せてしまうと何かと有利な事も減るからね。」 スネ夫「なるほど……」スネ夫は納得した。 ジャイアン「俺はよく分からなかった……」 ジャイアンは混乱している。 ドラえもん「要するに、時間犯罪者は、僕達を殺さないんじゃなくて、殺せないんだということ! それなら僕らにもまだ、勝ち目がある!!!」 ドラえもんの目が光った。 ジャイアン「やろう!! 俺達で時間犯罪者をギッタン、ギッタンにしてやろうぜ!!!」 スネ夫「うん!!!」 ドラえもん「皆!頑張ろう!!のび太君は?」 のび太「え、あ、うん。」『クッッッ!』 全員は手を合わせた ジャイアン「しずかちゃんの仇をとろうぜ!!」 オー、と、皆声を合わせた。 スネ夫「ところでなんでドラえもんは今日はそんなに冴えてるんだい?」 ドラえもん「えっ?」 ドラえもんの手にはグレートアップ液が握られていた。 ドラえもん「とにかく、出木杉君たちに報告しなきゃ」 と言い、ドラえもんはポケギアを取り出し、出木杉に電話をかけた。 ドラえもん「もしもし………」 出木杉「ああ、ドラえもん君かい? 話ってなんだい?やす夫君もはる夫君も気になってるよ」 ジャイアン「皆一緒か。丁度いい。」ドラえもんは、今までの出来事を全て出木杉に話した。 出木杉・やす夫・はる夫「嘘だろ……しずかちゃんが……」 三人は信じられないといった様子で絶句した。 出木杉「でも僕らが先にジムバッジを集めたらしずかちゃんは生き返るんだね」 ドラえもん「厳密には違うけど、まあそういうことだね。」 出木杉「でも、いいの? 今までの話を総合すると、まだタンバに時間犯罪者がいる可能性が高いよ。」 ドラえもん「いても何も出来ないさ。だってもう特殊能力では僕らを殺せないし、四対一じゃ分が悪いだろうからね。」 と、ドラえもんは言った後、また一息おいてこう言った ドラえもん「出木杉君。僕らはこれからどうすればいいと思うかい?」 出木杉はしばらく考えた後、口を開いた。 出木杉「とりあえず今は、犯人を探す事が一番だと思う。」 ドラえもん「君もそう思うかい。」 しかしそこでスネ夫が口を挟んだ スネ夫「でもさ、もし、これから奴が僕らに尻尾を掴ませないために僕らを無視してバッジを集め始めたらどうするのさ!! なんの手掛りも得られぬまま、奴だけ現実に帰っちゃうよ!」すると出木杉も考え込むように言った。 出木杉「う~ん。実は僕もそう考えてたんだけど……。」 スネ夫「だろ!僕にいい考えがあるんだ! 今から君達がチョウジのジム前で待ち伏せしておく。 時間犯罪者はいつかはバッジを集めなきゃならないから、チョウジのジムにくる。 そいつを捕まえればいい!!」 と、スネ夫は熱く提案した。 出木杉「それは無理だ……… だってもうチョウジのバッジは手に入れてしまったからね。 それにただ待ち伏せるだけじゃ、何も状況は変わらないと思うんだ。向こうからしたら動かなければ良いだけの話だからね。」 スネ夫「じゃあどうするつもりなんだ!!!」 出木杉「僕に一つ考えがあるんだ。 奴はシジマを殺すことで、結果的にバッジを独占し、有利な位置にたっている。 ならば、僕らをバッジを独占すればいいんだ!」 その出木杉の一言に皆が驚かされた。 ジャイアン「まさかお前もジムリーダーを殺すのか………」 ジャイアンがおそるおそる訊いた 出木杉「いや。そんな事をするはずないじゃないか。」 出木杉は即座に否定した。そしてまた喋り始めた 出木杉「今までので思ったけどさ。 この世界では一つしか得られないものと皆に配られる物とがあるよね。 今までの冒険で気付いたけど後者のものはジムバッジ、秘伝マシンしか無いことに気付いたんだ。 その他のアイテムは人が何人いようと一個だった。ゼニガメじょうろがいい例だね。」 ジャイアン「だからそれがどうしたんだよ!」 出木杉「落ち着いて考えて見てくれ。イブキからバッジを貰うためには何が必要だったかな?」 スネ夫「あっ!」 出木杉「そう!それは「りゅうのきば」。 以前金銀をプレイした人なら分かるよね。」 可能性は高かった。 今まで、ストーリー進行に必要な物であろうとなかろうと、ジムバッジ、秘伝マシン以外は一個だけであった。 ずぼらなドラえもんの設定ミスがこんなところで役に立とうとは。 ドラえもん「なるほど……… これなら時間犯罪者もいつかは僕らと接触を取らざるを得ないな。さすが出木杉君!!」ドラえもんは感心した。 のび太『ふん。 ジムバッジの独占など既に想定の範囲内。 寧ろ好都合だがな。』 と、のび太は心の中で言った。 確かにのび太にとって、ドラえもんたちにがバッジを集めるのは好都合だった。 スキを見て殺して奪えばいい。 しかし、問題はのび太には今、それを行う程の力がない事だった。 奴らの名前が分からない以上、ポケモンバトルで奴らのポケモンを全滅させて無理矢理奪うしか手は無いが、手持ちは、ポッポと、ケーシィ。 勝てる筈がない。 それなら自分が闘うしかないが、リスクがでかすぎる。 ならば、今からポケモンを、捕まえ手持ちを鍛え直すしかない。 この辺のトレーナーも粗方殺してしまったので、自分はもう経験値を得られる手段を失っている。 すると次の手は一つしかなかった。 のび太「ねぇ。ドラエモン。もうこの町から出ない?」 ドラえもんはのび太の突然の発言に驚いたがすぐに 「どうしてだい?」 と、訊いた こののび太という少年は全くと言っていい程頭がよくなかった。 あまり、下手な発言をすると、怪しまれる恐れがあった。 なんとか会話を出ていく話に操作するしかない。 のび太がまた、口を開こうとした瞬間、スネ夫が先に口を開いた。 スネ夫「確かに僕らはこの町から早く出た方がいいと思うよ」 のび太は予想外の発言に驚いたが、このままスネ夫に任せることにした。 スネ夫「だってさ、やつに先を越されてもしアサギのジムバッジを取られたら大変じゃない? また、面倒な事になるよ」 ドラえもん「どういう事だい?」 スネ夫「例えばね、 秘伝の薬も多分、独占可能だろうから、僕らが先にイベントクリアしてアサギのジムバッジも独占できれば、かなり有利になれるんじゃない?」 ドラえもん「成程ね。でも確かに秘伝の薬は独占可能だろうけど、ジムバッジは独占出来ないよ。 それはジムリーダーをジムに移動させるだけだから。まあ、例を挙げるなら、「誰かがウソッキーを退かせたら、皆あの道を通れるようになった」ということみたいなものさ イベントクリア後なら誰でもすぐに挑戦できるんだ。 しかし、時間犯罪者に先を越されたら、またジムリーダーを殺される危険性があるな。」ドラえもんは、すこし黙って考えた。 ドラえもん「よし、皆、今からアサギに行こう」 ジャイアン「そうくるのを待ってたぜ! こんな港町にも飽きたしな!」 ジャイアンもこの町を出たくてうずうずしてたらしい。 のび太『キシシシシ。 うまくいったぜwww』 物事は面白いように、のび太の思う様に進んだ。 その後皆はポケモンセンターから出て、秘伝の薬を貰いに行った。 スネ夫は行く途中でまた、時間犯罪者の攻撃があるのでは、とビビっていたが、 のび太『キシシシシ。俺が此処に居るのに出来る筈ねぇじゃんwww』 まあ、そんな事もあったが今回は、皆で無事に薬を貰う事が出来た。 そして、一行は時間犯罪者に会わぬようすぐさま、タンバを離れた。 しかし、その時間犯罪者がその一行の中に居ることは一人を除けば、誰も知らないことだった。 次へ
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のび太 Summon 3(光) / 700f 人間の召喚 Atk=0 HP=1 後手,伝説 のび太が戦闘に参加した場合、あなたはバトルスペルを使用できない。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/81 参照 映画シリーズ コメント欄 名前 コメント
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前へ 空き地の激闘 のび太の部屋が徐々に明るくなり始めた。さっきまで真っ暗だったというのが嘘のようだ。 完全に光を取り戻したのび太は部屋をくまなく見た。しかし、何の変化も感じられない。 騙されたのか?のび太は急に不安になってきた。なぜかというとこれと言った変化が無かったからだ。 窓から見る風景も何の変哲もない。ふと、ズボンの腰の辺りに何やらボールが三個付いていた。 それは上が赤色で下の部分が白になっている。 間違いない、それはポケモンが入っているモンスターボールだとのび太は確信した。 「これは絶対にモンスターボールだ! きっと、強力なポケモンが入っているに違いない」 のび太はモンスターボールを手にとって喜びの声を上げた。 嬉しい――この瞬間はのび太にとって至福の時だった。長年憧れつづけていたものが手に入ったのだ。 強力なポケモンが入っている証拠はどこにもなかったが、ポケモンには絶対の自信を持つ自分が、 弱いポケモンを持っているとは夢にも思わなかった。 「ようし、早速家から飛び出してみよう。もう引きこもりはやめだ。 僕はこの世界に来た瞬間から最強のポケモントレーナーなのだ!」 奇声を発しつづけながら、家から飛び出した。もう落ちこぼれとは言わせない。 いきなりこの世界にやってきたドラえもん達の慌てふためく顔が目に浮かぶようだった。 特に聡明で底の知れない出木杉の慌てる顔が見ものだった。 のび太は出木杉とは比較的仲の良い関係を築いていたが、心の中では底の知れない奴と思っていた。 (ふふふ……出木杉め、今頃大慌てでいるだろうに……) ニヤリとほくそ笑みながら階段を駆け下りる。そして大急ぎで靴を履いて玄関のドアを押しあけると、 まだ見ぬ世界へと駆けだしていった。 のび太の街の空は既に夕闇を迎えていた。それでも満面の笑みを浮かべながら歩を進める。 目的の場所は特に決まっていなかったが、心が躍って歩きださずにはいられなかった。 とりあえず空地にでも行ってこようか?もしかしたらジャイアンとスネ夫辺りがいるかも知れない。 (あの二人に僕の最強のポケモンを見せつけてやろう) のび太の心臓の鼓動がさらに大きくなり、胸が高鳴る。 自分はこの世界では王様のようなものだ。そうのび太は感じている。 通りすがりの人達が好奇な目で自分を見ている。 今に自分の強さを目の当たりにし、尊敬の眼差しに変えてくるだろう……。 のび太の夢は膨らむばかりだった。 そしてようやく目的の空地に着くとのび太は愕然とした。 空地は土管が三つ積み上げられている。その積み上げられた土管にふんぞり返っている者が一人。 それに土管の傍らに突っ立っている者がいた。 空地にふんぞり返るとまず思いつくのはジャイアンだったが、 今――空地にふんぞり返っているのはまったく別の男だった。 のび太はその顔を知っていた。ポケモンのゲームに登場する確かハヤトという人物だった。 もう一人はセンリという物静かな雰囲気を纏った男だ。 ハヤトはこちらに敵意を持った目をぎらつかせて 「何だ? お前は。ここは俺達の縄張りなんだが」 明らかにのび太に警戒心を持った口調で言った。 「僕は野比のび太だ。この世界の主だ」 のび太は負けないように言い返した。少しの沈黙の後、ハヤトは大笑いした。 「ははははーっ! 馬鹿め! この世界の主だと!? ホラ吹きめ! この世界の主はレッド様だ! 貴様などではない! 貴様は反乱分子として最強の飛行ポケモンの使い手である、 このハヤト様がポケモンバトルに勝利した後に国王レッド様が住まわれる王宮に突き出してやる! センリ、いいよな?」 ハヤトは大笑いしながら横にいるセンリに問いかけた。 「良かろう……だが、お前の手に負えないようなら俺が挑むがいいか?」 落ち着き払った口調でセンリは言った。 「馬鹿め! このハヤト様がこんなへなちょこ野郎にやられるかってんだ。 それより、こいつのランキングが知りたい。俺はあれをもっていないのでな」 ハヤトは再びセンリに問いかけた。センリはポケットの中から何やら 黒いゴーグルのようなものを取り出した。 「このトレーナーランキングゴーグルを使えば相手の強さが分かるが 使う必要はなかろう。俺の予想ではあいつのランキングは3000位程度と見ている。 1603位のお前の相手ではなかろう。測るまでもない……」 厳しい目でのび太を観察するように見ながらセンリは述べた。 既に夜になり、暗闇に包まれてよく相手の表情は窺うのが難しかったが、 あの二人が自分が軽く見て、馬鹿にしている様子なのが見て取れる。 完全に舐められているのだ。のび太は二人のやり取りを聞いて、 この世界には相手の強さを把握するアイテムがあるのを知った。 あの二人は自分を3000位などと言ったが、のび太は自分のランキングは1位だと思うことにした。 (今に見ていろ。あの二人をぎゃふんと言わせてやる) 内心ではそう思っていたが、不安だった。それはハヤトが言ったレッドのことだ。 しかし、そのことは頭から離すことにした。それがいいのだ。 「勝負だ! かかってこい、野比のび太! ゆけっ、ピジョン!」 ハヤトは勢いよくボールを投げて大型の鳥の形をしたポケモンを繰り出した。 暗闇を自由自在に飛んでのび太を睨み付けている。羽を大きく羽ばたかせ羽毛を飛び散らす。 戦闘意欲は十分だった。それを見てのび太は不安になった。 のび太が持っているポケモンは何が入っているのか分からないのだ。 事前に調べれば良かったのだが、のび太はポケモンの世界にやってきた喜びで肝心なことを忘れていた。 (もしも弱いポケモンだったら……) コテンパンにされるだろう。 落ち着け、大丈夫だと自分に何度も言い聞かせながらモンスターボールを投げた。 ボールは眩い光を放ちながら地面に転げ落ちる。 そして中から青色を基調とした巨大なポケモンが姿を現した。 それはさながら特撮の怪獣のようなフォルムをしている。 鋭い爪や牙を備えていて、顔は特に鮫の中で最も獰猛と言われるホオジロザメに似ていた。 まるで鮫が立って歩いているかのようだ。それに加えて無駄な贅肉をそぎ落としたような姿は圧巻だ。 (大当たりだ) とのび太は内心思った。そのポケモンはガブリアスと言い、ドラゴンタイプ最強と言われている。 まさかガブリアスが入っているとは驚きだった。 もしも、事前にガブリアスが入っていることを知っていたらハヤトにビビることはなかっただろう……。 「ガブリアス、逆鱗だ!」 のび太はガブリアスに最強の技『逆鱗』を命じた。 のび太の命を聞いたガブリアスは突如狂ったように暴れ出し、体を回転させジャンプをして 空高く飛ぶピジョンに攻撃した。 ピジョンは一瞬にして飛翔する力を失い、急降下して血しぶきと共に地面に落下する。 「馬鹿な!? 俺様のピジョンが……」 呆然と立ち尽くしてハヤトは自分のピジョンを見ていた。 そして我に返って戦闘不能に陥ったピジョンをボールに戻すとその場にガクッと膝を落とした。 のび太は勝利したにも関わらず、ガクガクと体を震わせていた。 自分のガブリアスが一瞬にしてピジョンを戦闘不能にするのを見て恐怖すら感じた。 ポケモンバトルとはこんなにも恐ろしいものだっただろうか? それともガブリアスとピジョンのあまりの戦闘力の差か? どちらにしてものび太はピジョンを倒して主人である自分に褒めて貰おうとしているガブリアスの目を見て、 嫌悪感を抱かずにはいられなかった。恐ろしかった。 それでも徐々に優越感が込み上げてくる自分が嫌になった。 (これがポケモンバトルか……僕は甘く見ていた) のび太は罪悪感に苛まれつつ、絶望の表情を見せているハヤトに向かって言った。 「ハヤト、ピジョンは大丈夫かい?」 「心配は無用だ。このぐらいポケモンバトルでは良くあること。 ポケモンセンターに行けばたちどころに治る」 ハヤトは吐き捨てるように言った。ハヤトの敗北を目の当たりにしたセンリがのび太の前に出た。 「……ハヤトでは駄目だったか、ならば俺が相手になろう。 ちなみに俺のランキングは189位だ。いつもハヤトとつるんではいるが、 俺の実力はハヤトを遥かに凌ぐ。いくんだ、ケッキング!」 そう言ってセンリはボールを投げ、超巨大な類人猿の姿をしたポケモンを繰り出した。 その巨体は立ち上がると2メートルは下らないであろう。 しかし、なぜかそのポケモンは地面に横たわっていた。 「ケッキング、ギガインパクトでガブリアスに攻撃!」 「ガブリアス、逆鱗!」 のび太は逆鱗を再び命じる。ガブリアスはのび太の命令を聞くと再び狂ったように暴れ出す。 鋭い爪を突き立ててケッキングの腹部に突き刺した。途端にケッキングの鮮血が飛び散る――。 唯、ケッキングもやられっぱなしではなかった。 ケッキングは巨大な体躯を起き上がらせて立ち上がった。 立ち上がるとはるかにガブリアスよりも大きかった。 ケッキングは巨体を生かしてそのままガブリアスに突撃する。 ガブリアスはケッキングの一撃をくらってよろめいた。 やばい、このままギガインパクトを続けられたらガブリアスは持たない。 のび太がそう思った時、ケッキングは何を思ったのかまた地面に横たわった。 「ガブリアス、今だ! 反撃だ!」 のび太が叫ぶのと同時にガブリアスは横たわったケッキングに渾身の逆鱗を与えた。 ケッキングは悲痛の叫びの声を上げるとわずかにピクピクさせるだけでほとんど動かなくなった。 「トレーナーランキング189位のセンリが負けた? 野比のび太……いったいランキングはいくつなんだ?」 センリが敗れたのを見て更に絶望するハヤト。 「慌てるな、今……調べる」 センリはケッキングをボールに戻すと、上着のポケットから黒いゴーグルを取り出して 顔に付けた。すると、センリの額から汗が流れ出てきた。 明らかに脅えている。震えながらセンリは言った。 「トレーナーランキング127位だ!」 その言葉にハヤトは凍りついたようになった。 「127位だと!? いくらなんでもこんな間抜けな野郎が127位なわけないだろ! 何かの間違いじゃないのか?」 「確かに127位を示している。だがトレーナーランキングゴーグルの故障かもしれん。 最近、手入れしていなかったし、旧型でもある……」 闇夜の空地の周辺には既に街灯の明かりが灯され、 ポケモンバトル終了と同時に静けさも戻りつつある空地に忍びよる足音が聞こえた。 のび太が振り向くとそこには長身だが、頭が禿げあがっている老人が姿を現した。 トレーナーランキングゴーグルという、この世界独特の相手の強さが分かるアイテムをしている。 「センリとハヤトに勝利した君はなかなかのものだ。今度は私と勝負してくれないか?」 現れるや否や、突然のび太にポケモンバトルを仕掛けてきた。 「あなたは?」 ビックリしながらものび太は尋ねた。 「私はカツラ、唯の老いぼれだ。ほう、確かにランキング127位。 138位の私より数段上だ。だが、油断しない方がいい。 数々の修羅場をくぐりぬけ、長年鍛え抜かれた私のポケモンの力を侮らない方が身のためだ」 カツラの言葉とともにカツラの気迫と闘志がひしひしと伝わってくる。 (今度の相手は一筋縄ではいかない。気を引き締めなければ) カツラが発する百戦錬磨のオーラをのび太は敏感に感じ取った。この人は強い。 「カツラさんの登場か……。これで野比のび太の真価がわかる」 センリは二人の勝負に注目しながら言い放った。 空地は熱いポケモンバトルのフィールドと化し、戦う両者の気迫が支配した。 緊迫感が空き地全体に漂う。夜風を受けて草がゆれる。 のび太は気を振り絞ってモンスターボールを投げた。 手持ちの三匹の内、一匹はガブリアスだと確定したが、残りは不明だったので別のボールを投げた。 出てきたポケモンは二足歩行でヒト型に似るが、なによりキノコの笠を被った外見が特徴のキノガッサだ。 (やった、これまた大当たり!) キノガッサはかなり強力な部類のポケモンで、人気が高い。 「キノガッサか……。確かに強力なポケモンだが、私の炎ポケモンの前では無力。 ゆけえっ! ゴウカザル!」 喜んだのも つかのま、カツラが繰り出してきたのは最強の炎タイプの呼び声高いゴウカザルだ。 弱点である草タイプを持っているキノガッサでは相当不利だ。 のび太はカツラのことをゲームで知っているので炎タイプの使い手であると知っていた。 しかし、すっかり忘れてキノガッサが出てきたことを喜んでしまったのだ。 のび太は浅はかな自分を呪った。こんな調子でこの先勝ち抜いていけるだろうか? 「ゴウカザル、フレアドライブで焼き尽くしてしまえ!」 カツラの一言でゴウカザルが元々身に纏っている炎を強くし、 激しく燃え出させてキノガッサに情け容赦なく襲いかかってきた。 のび太はキノガッサをボールに戻そうとするが、まだポケモンバトルに慣れていなく、 あまりにもゴウカザル凄まじい勢いに咄嗟に対応出来なかった。 (ああ……どうしよう) 万事休すかと思われたその時であった―― 突然、空き地にゴウカザルの灼熱とも言える炎すらも いとも簡単に消し去る程の雨が降りしきる。 これこそ天の助けであった。ゴウカザルが突然攻撃を止めて苦しみ出した。 ゴウカザルの元々纏っていた炎すらもかき消える。 (ゲームとは違って良かった) のび太は内心思った。これがゲーム通りであったならば、 雨が降っていようがゴウカザルのフレアドライブによって一瞬にして倒されていただろう。 のび太はこれこそ天の助けとばかりに歓喜した。 反対にカツラは天を睨みながら、雨を呪っているように見えた。 「………雨かね。これでは私の炎ポケモンは成すすべがないね。 君は本当に運がいい。天に感謝しなさい、雨が降らなければ君は負けていたのだから。 私には分かるよ。君はランキングが私より上でもポケモンバトルに慣れていない。 あの時、咄嗟に別のポケモンに交代させることもできたのだ。 なのに君はポケモンを交代させることをしなかった。これ以上続けても恥をさらすだけだよ。 もしも、このまま続けていたら……。 私のポケモンは一匹も倒されずに君のポケモン三匹を倒していただろう。 私には分かる……君は素人だ」 カツラは淡々と言葉を続けた。冷静な語り口だった。 のび太はその言葉に怒りを覚えた。 ポケモンのゲームを何百時間もプレイした自分を甘く見られるのが許せなかった。 「ふざけるな! 僕は誰よりもポケモンに詳しいし、誰よりも強いはずだ!」 のび太は激高してカツラに怒鳴った。のび太のどなり声が雨の中、周辺近所に響き渡った。 「意地を通さずに認めなさい、君は弱い。 まず自分の弱さを認めない限り、強くはなれないよ。 それより雨が強くなってきたから、皆帰ろう。さらば」 カツラは大人びた口調で子供を諭すかのように言った後に背を向けて去ろうとする。 センリとハヤトもそれに従う。 「待て、お前ら! お前らには僕の強さが分からないのか!? それに僕はこの世界を作った創造主なんだぞ! 僕はこの世界で一番偉いんだ!」 のび太は去ろうとする三人に向かって怒声を浴びせた。 それを聞いたカツラは去ろうとする足をピタリと止めて言った。 「……二度とその言葉を口にしない方がいいよ。 反乱分子としても捉えられかねん、この世界の主は宮殿に住まわれる国王レッド様だ。 それを肝に銘じたまえ、青年よ」 カツラは何やら遠くを指さして言った。その指先には見たこともない宮殿が立っていた。 のび太は今まで気づかなかった。あんなところに宮殿が建てられていたなんて……。 「カツラさん、そう言えばさっきもこいつ……『この世界の主だ』とか言ってましたぜ」 ハヤトは思い出したかのように言った。それにセンリも無言でうなずく。 「そうか、それは危険だな……」 カツラの表情が険しくなる。 「カツラさん、こいつを捕らえて王宮に連れ出した方がいいかもしれません」 冷静にセンリがカツラに意見した。 「いや、その必要はないだろう。我々が捕らえなくても レッド様の命を受けて反乱分子を見つけ出す者がこの街にたくさん潜んでいる」 そう言うとカツラはセンリとハヤトと共に空き地から姿を消し、 のび太はしばらく呆然と空地の中央に立ちつくしていた。 次へ
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前へ 暗い暗い闇の中。 僕はずっとその中を泳いでいた。 いや、正確には僕は泳げないから、漂っていたと言った方が正しいかな。まぁそれはどうでもいいけどね。 ところで、僕はどの位の距離を、何時間、何日、いや何ヵ月泳いでいたのだろう。 それは僕には、全く分からなかった。 見当もつかなかった。 ただ、あの忌まわしい記憶は残っている。 シジマさんや海パン野郎達を躊躇無く殺していった事を。 僕は突然、言いようもない感じ(罪悪感って言うのかな)に襲われ身震いした。 何故あんなことをしたんだろう。 心が痛くなった。 その時だった。 突如目の前の闇を突き破り、一筋の光が差しこんだ。 その光は形を変えてゆく。 それは人の形をしている。僕の大好きな人。 僕はそれが誰か知っていた。 「しっ、しずかちゃん!」 僕は叫びをあげ、しずかちゃん元へ無我夢中に泳ぐ。正確にはもがく。 しかし泳げども距離は縮まらない。僕は自分の水泳の才能を呪ったが、そんな事はどうでもいい事だった。 しずかちゃんは言った。 しずか「………たさん……びたさん……のび太さん。」 のび太「しずかちゃぁぁーーーーん!」 彼女の囁きで、僕はもがきのペースを早めた。 いつのまにか涙が溢れ、顔はぐちゃぐちゃになっていた。 しずかちゃんはそんな僕に、一瞬微笑みを浮かべると僕の方へ(まるでタケコプターでもついてる様に)飛んで来た。 のび太「しずか……ちゃん?」 僕は囈の様に言う。 すると、しずかちゃんはもう一度僕に微笑みを投げ掛け、耳元で一言囁いた。 しずか「のび太さん……。 皆を……皆を……助けてあげて……。」 しずかちゃんはそう言うと僕の元から離れ、上の方へ(闇の中で言うのもなんだけど、まぁ僕の頭がある方が上だろ。常識的に。)飛んでゆく。 のび太「しずかちゃぁぁーーん!」 僕は懸命にしずかちゃんを追いかける。 のび太「しずかちゃん! 皆を……皆を救うってどういう事!? ねぇ!しずかちゃん! 待ってよぉー。ねぇったらぁ!」 僕はかつて無い程の必死さでしずかちゃんを目指す。 涙と鼻水で化粧された顔は、かなり不細工なものになっていたであろう。 しかし僕は泳いだ。 しずかちゃん目指して。 僕の心の一つの輝き、そして光。それを目指して。 僕は光を求め、重いまぶたを開いた。 舞台は戻って自然公園。 のび太「………うーーん……。」 今にも起き上がろうとするのび太にゲンガーは唖然とする。 ゲンガー「な……何故こんなに早く起きれるんだ……。」 ドラえもん「僕は始めから思ってた。 君を捕まえる事は出来ないってことをね。 だから、ボールを囮にして『はっかのみ』をのび太君に投げ与えたんだ かなりリスキーな作戦だけど成功して良かったよ」 ドラえもんの言葉を聞き、ゲンガーはぎょっとする。 ここでわざわざのび太を起こしたということは、次に来る策はただ一つ。 ゲンガー『俺をボールに回収する気だなッ!』 ヤバイ、これはマジでヤバイ。 奴があの眼鏡猿を起こしたのは、自分の『所有者』であるのび太に自分をボールに回収させる為だろう。 ボールの中に入れば如何に自分のレベルが高かろうと無力な存在。 眼鏡猿の所有権は解除してしまったから、もう一度、あのルールを満たさない限り奴を操る事は出来ない。 故にボールに収められたらもう終り。 絶対絶命のピンチだ。 しかし、まだ希望が潰えた訳では無い。 ノートのルールにより、のび太はここに至るまでの過程の記憶が全く無い。 故に、今すぐこの状況を理解する事は到底不可能だろう。 奴の単純な性格は、タンバまでの追跡、数日間を共にした日々で良く分かっている。 自分の話術なら、『かなしばり』が解ける残り数十秒位なら上手く時間を稼げるだろう。 解けたら即、あぼーんさせれば良い。 ゲンガーは簡単に作戦を立てると、まだ寝起きたばっかりののび太の元へと近づいた。 ゲンガー「おい、のび太!ヤベエぜ、お前がタンバで人殺したのがバレてんぞ。皆俺達を許さねえって言ってるぜ。どうするよ?」 とりあえず、今の状況を誤魔化す為に嘘の情報を流さなければ。 安い策だが、寝起きのまだ働いてない脳味噌には効果抜群だろう。 それを見たジャイアンはヤバイと思い、のび太に指示を飛ばす。 ジャイアン「おーい!のび太!騙されんな!早くそいつをボールに戻「アーーーーー、アーーーーー。 なんて言ってるのか聞こえないなぁ。アーーーーー。」 ジャイアン「あの野郎……。 ワザと大声を上げて、俺の声をかき消してやがる……」 ジャイアンは唇を噛む。 単純だが、時間を稼ぐには最良の手だ。 成程、最初にのび太に接近したのもこの為か。 ジャイアン「おーい!のび太!聞こえるだろうよぉーッ!のび太ぁぁ!」 ゲンガー「ワーーーーー、ワーーーーー。キシシシシシ。あのデブゴリラ。無駄なのによぉ。」 尚も声を上げるジャイアンを見てゲンガーはあざ笑う。 ゲンガー『さて、そろそろ『かなしばり』が消えるな。 そしたらまず眼鏡を消し去って……。ん?』 そこまで考えて彼は気づいた。目の前の少年の顔に。 涙でぐしゃぐしゃになり、憎しみを込めてこちらを睨んでいることに。 そして、一番ゲンガーの精神を揺さぶった事は、彼の手にモンスターボールが握られていた事だった。 ゲンガー「テメエッ!何を!」 のび太「何をって……?見たら……見たら分かるだろ…… 時間犯罪者……お前を……封じ込める!」 有り得ない。この状況で奴がこんな行動をとれるのは有り得ない。 第一、ここに至るまでの記憶は無いし、ジャイアンの指示も全て聞こえなくした。なのに何故…… のび太「僕は……夢を見た。 しずかちゃんの夢を。君が……君がしずかちゃんをッ!だから……君は……僕が封じ込めてやる!」 のび太はモンスターボールをゲンガーの方へと傾ける。 ゲンガー「ガキがぁぁーーーー!調子に乗るんじゃねぇーーーーッ!」 ゲンガーの激昂が天に轟いた瞬間、彼の肩がすぅっと軽くなった。 ドラえもん「ヤバイ!『かなしばり』が解けた!」 ドラえもんも叫ぶ。 ゲンガー「食らえッ!シャドーボールッ!」 のび太「戻れ、ゲンガー!」 凄まじい光が辺りに発生する。 その光に驚き、ゲンガーは目を瞑る。 そして彼は光が消えると、再び目を開いた。 目の前に、あのにっくき眼鏡猿は居ない。 ゲンガー「キシシシシシ。 キシシシシシ!」 ゲンガーの笑いが響く。 彼は辺りを見回すが、回りには最早誰もいない。 ゲンガー「みんな……みんな消し飛びやがったぁッ! キシシシシシ!雑魚共めッ!」 ゲンガーは笑った。笑う事しか出来なかった。 何故なら……彼は今檻の中の『無力な存在』だから。 あの瞬間……、始めに光弾を放ったのはゲンガーだった。 しかし、それがのび太にぶつかるかぶつからないかの瞬間、『あなをほる』で回りこんだジャイアンのイノムーが、二人の間に割って入ったのだ。 イノムーが吹っ飛ばされた次の瞬間……ゲンガーは無事ボールに回収されたのである。 舞台は戻る。 時間は止まっていた。 誰もすぐには動かなかった。 本当に終わったのか?そんな考えが皆を包んでいた。 しかし、しばらく時が経ち、ゲンガーが飛び出して来ない事を確信すると、スネ夫はヘナヘナとその場に腰をおいた。 スネ夫「……お……終わった……」 スネ夫に釣られたか、皆緊張の糸が解け、その場にヘタリ込む。 ジャイアン「勝ったのか……? 勝ったのか?俺達は?」 ドラえもん「勝ったよ……僕達は……」 ジャイアン「そうか………」 ジャイアンもすっかり骨無しになっている。 するとヘタリ込む三人の前に、目を赤くした少年がやって来た。 そいつは言った。 のび太「皆……皆……ごめん……本当にごめん…… 今まで何が起こってたか分かんないけど…… タンバの……タンバのシジマさんを殺したのは……僕なんだ……」 ジャイアン「なんだっ(ry」 思わず叫ぼうとしたジャイアンの口をドラえもんが塞ぐ。 そしてドラえもんは言った。 ドラえもん「それは本当かい?」 ドラえもんの問いに、のび太涙を拭き無言で懐から小さい何かを取り出す。 それは紛れも無く、タンバジムバッジ、ショックバッジだった。 のび太は続ける。 のび太「……誰にも……勝てなくて……僕が……泣いてた時……ノートを拾ったんだ…… そして……僕は……」 ドラえもん「それ以上言わなくていい。」 ドラえもんはそう言い、のび太にハンカチを差し出した。 ドラえもん「大丈夫だよ、のび太君。僕らは……君を許すよ」 のび太「ドラえもぉぉぉん!!」 のび太はドラえもんに抱きつき、体を任せた。 溢れる涙を止める事は出来なかった。拭えど拭えど止まらない。 ジャイアン「泣かせやがる………」 スネ夫「うん……」 二人も貰い泣きしていた。 その時、 ?「いやぁ、友情という物は美しい物だねえ」 見知らぬ男がこちらを見て拍手をしていた。 その姿はピッチリとしたスーツに包まれた、さながら戦隊もののヒーローのようだった。 スネ夫「誰だい?君は……?」 男「君に答える義務があるかい?」 スネ夫は素直な疑問を述べたが、男に即打ち消されてしまった。 その言葉にカチンときたのか、ジャイアンが男に詰め寄る。 ジャイアン「オイオイ…… お前が何処の誰だか知らないけどさ、何様のつも……」 ジャイアンの言葉はそこで止まった。 男の拳がジャイアンの体に当て身を食わせたのだ。 のび太「ジャイアン!」 驚きを隠せない一同に、一方男はトランシーバーのような物で誰かと会話する。 男「アー、こちら……。これから容疑者の確保に入る。 作戦開始!」 次の瞬間、 スネ夫「プギー!」 謎の光線に当たり、スネ夫が倒れた。 ドラえもん、のび太「スネ夫ーッ!」 のび太とドラえもんは反射的に光線の出どころを見る。 そこには、男と似たような格好をした女がそこに立っていた。 手には光線銃が握られている。 ドラえもん「一体これは何……」 男「おやすみ。」 男は光線銃を取りだし、その引金を引いた。 その場に二人の人間が倒れた。 男「よし、回収だ。」 男はのび太の元へと歩み寄り、その手から乱暴にモンスターボールを奪い取る。 のび太は薄れゆく意識の中、必死に意識を保ち彼らの話を聞いていた。 男「えー、もしもし? タイムパトロールですか?たった今容疑者を確保しました。 時代と次元は……」 のび太『タイムパトロールだって!?』 のび太は驚く。 女「待って、この子まだ意識があるわ!」 ヤバイ。 のび太の血の気が引く。 男「じゃあ、もう一発撃って早く眠らしちゃいなよ」 ビビビビビビビ。 それはのび太の聞いた最期の言葉になった。 ボールを回収し終えた二人は、迎えのタイムマシーンに乗り元の時代へと引き返していた。ついでにノートも回収してきた。 女が言う。 女「あの子達はどうしたの?」 計器を確認しながら男は言う。 男「別の班が動いてる。 記憶と時間を少々操作して現実世界に返してやるんだってさ。 多分彼らが次に目覚めるのは彼らの寝床だよ。」 女「そう。」 女は一息つく。 男「それにしても、最後にアイツを封じ込めたあのボールは凄かったな。 23世紀の科学顔負けだよ。 『モンスターボール』って言ったっけ? 同じ名前の秘密道具があった気がするけど」 男はゲンガーの入ったモンスターボールを手に取り、呟く。 女「時間犯罪者の記憶の操作は?」 女は再び疑問をぶつける。 男「『ゲームの記憶』だけ消し去ってるよ。 後、暴れないように力を弱くしておいた。 奴も23世紀に戻れば裁かれるんだろうな おっと……」 突如、タイムマシーンの機体が揺れ動く。 女「どうしたの?」 男「時間の乱気流にはいっちまったみたいだ。大丈夫、すぐに……おわっ!」 女「きゃあああああ!」 機体が大きく傾き二人は壁に体を叩きつけられた。 しかし一息つくと、また逆に叩きつけられる。 まるで箱の中に入れられて振り回されているようだった。 女「きゃあああああ!」 男「慌てるな!すぐに収まる!」 数分後、男の言う通り機体の揺れは収った。 二人はホッと一息つく。 女「イタタタタ……。 あんな時の乱気流は久しぶりに体験したわ。」 女は肩を押さえながら呟く。 男「そうだな……。くそっ、俺は膝をうっちまった……。ああああッ!」 男は突如すっとんきょうな声を上げた。 女「どうしたの?」 女の問いに、男は無言で計器を指さした。 女はそれを見て真っ青になる。 なんと計器がメチャクチャに壊れていた。 これでは航行不能だろう。 男「畜生!ここまで……ここまで来たのに……!」 女「嫌よ!私死ぬの嫌よ! ねぇ!どうするのよぉ!」 男「慌てるなッ! あ…………機体が……崩れてゆく……」 女「きゃあああああ!」 二人の健闘も虚しく、二分後船は時間と次元の波へと飲まれていってしまった。 「うーん……、はっ、ここは?」 明るい陽射しを浴び、『彼』は目を覚ました。 ここが何処かは分からないが、何とか自分が生きている事は分かる。 タイムマシーンが途中航行不能に陥った事は覚えている。 それと、自分が23世紀で犯罪を犯し、逃げてきた事も。 とりあえず、彼は意識をはっきりさせようと、顔を洗いに近くの水場へと足を運んだ。 「ん?やけに体が軽いな」 彼は自分の身の軽さに違和感を感じつつも、顔を洗いに水場へ顔を寄せる。 その瞬間、 「なんじゃこりゃあああああああ!!!!」 水面に映った自らの姿を見て、彼は100デシベルに達するか達しないかの声を張り上げた。 「え?え?どうなっちまってるんだ?」 彼は水面を除き込む。 その姿は幽霊や死神の様な類の姿をしていて、お世辞にも人間と呼べる様な物ではなかった。 「何だよコレマジで。こんなんじゃあまともに外も歩け……イテッ。」 すると、失意に沈む彼の上から何やら冊子の様な物が落ちてきた。 「イタタタタ、なんだよコレ……。」 彼は反射的にそれを見て拾いあげた。 黒いノートだ。 彼はこのノートをパラパラと捲り呟く。 「俺……このノート知ってる……。 使い方も……ルールも……。」 『彼』は呟く。『彼』は知らない事だが、どうやら「ゲームの記憶」を消されても「ノートの記憶」は残っていたらしい。 そして、自分は今『宿主』になる人間を探さなければならない事も何となく知っていた。 ?「よーし、ケーシィしか居ないけど頑張るぞー 僕が一番乗りで現実に帰るんだ!」 ヤベッ、誰か来る。 『彼』はノートを掴み、そそくさと物陰に隠れる。 数秒後、『彼』の前を如何にも頭が悪そうな少年が音痴な鼻唄を歌いつつ、通り過ぎていった。 現実?帰る?意味が分からない。 「あのガキは……とりあえず、跡をつけてみよう。 現実に帰るとか気になる事を言ってたし……。 頭悪そうだから……もしかしたら利用出来るかもな!キシシシシシ。」 彼はこっそりとのび太の跡をつける事にした。 彼がタンバでのび太少年にノートを与えるのはまだ未来の話。 そして、彼が今までこのシチュエーションを何度体験してきたかは、最早誰も知らない事であった。 そして彼は知らない。自分は今、無限の時の中で同じ事を無限に繰り返している事を。 そして舞台は現実世界に戻る。 ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。 のび太「うーん。」 今日もけたたましく鳴るアラームの音。 のび太はそれを止めるべく、手を伸ばした。 カチッ。 スイッチを押された目覚まし時計は急におとなしくなる。 のび太「おやすみ……」 のび太は再び夢の中へとGO BACKする。 のび太は気づいていないが、今は8時。小学校ではとっくに遅刻の時間だ。 そして彼はまた気づいていない。目の前の鬼に。 「のぉびぃたぁ……!」 鬼が怒りを浮かべた声を上げるが、のび太は のび太「うーん、行けっ、ケーシィ…… ああ、テレポートばっかしないで戦ってくれよぉ。」 ママ「のび太ぁぁ!!!!」 のび太「うあああああああああ!」 ママの雷が落ち、のび太はトーストをくわえ家から飛び出した。 ドラえもん「やれやれ……のび太君は……」 ドラえもんは小さくため息をついた。 のび太はすすきヶ原町を学校目指し、爆走する。 のび太『最高速度で……この角度を……曲がるッ! のび太、いっきまーす!』 しかし残念ながらアムロ・のび太は角を曲がりきることは出来なかった。 突如、横から来た誰かにぶつかったからである。 「オフッ!」「スップリングッ!」 のび太はその衝撃で吹き飛ばされた。 のび太「イタタタタ……。誰だよ……。 ん?ジャイアン?」 のび太の顔が青ざめる。 ジャイアン「のび太ぁぁ!」 のび太「ひいいいいッ!」 のび太は死を覚悟した。 その時、 出木杉「やぁ、野比君に、タケシ君じゃないか。」 ジャイアン「出木杉ィ。」 ジャイアンは思わずのび太への攻撃を止めた。 ジャイアン「出木杉が遅刻なんて珍しいな。」 出木杉「今日は起きるのが遅くてね。 変な夢も見たし。」 ジャイアン、のび太「変な夢?」 のび太とジャイアンは気になり、訊く。 出木杉「いやぁね、皆でポケモンの世界に行くって夢さ。 余り覚えてないんだけど。」 ジャイアン「なんだぁ、その夢w」 ジャイアンは笑い出す。 出木杉「まぁいいよ、笑ってくれても、所詮夢だし。ああ、それと野比君」 出木杉はのび太の方を向く。 出木杉「僕の後ろからやす夫君とはる夫が来るんだ。どうせ遅刻するんだし、もう少し待ってようよ!」 スネ夫「まさか、優等生の出木杉がそんなことを言うとはね。」 嫌味な言葉と共に現れるスネ夫。 のび太「スネ夫!」 スネ夫は続ける。 スネ夫「ちなみに僕の後ろからはしずかちゃんが来るよ」 ジャイアン「なあんだ、皆遅刻してんじゃねえか。」 ジャイアンの言葉に、今度は皆が笑った。 そして数分後。 ジャイアン「よーし、皆揃ったな。じゃあ、学校目指してしゅっぱーつ。」 総勢七名の遅刻者は学校を目指し歩き始める。 誰もゲームの事を覚えていない。 学校には遅刻しているが、皆はこのふとした日常に幸せを感じていた。 のび太も、そんな日常がいつまでも続けばいいなと思った。 『キシシシシシ。』 のび太「ん?」 のび太は何か聞こえた気がして立ち止まった。 ジャイアン「おーい、のび太、何してんだよ置いてくぞ~」 スネ夫「全くのび太はノロマだな。」 のび太「待って、今行く~」 のび太は走り出した。 のび太『気のせい……かな?』 こうして青い空の下、彼らの日常はまた静かに過ぎてゆくのであった。 ―ポケモンとのび太とノートと完― あとがき 605 名前:ポケモンとのび太とノートと ◆C1aEnJaUS2 [sage] 投稿日:2007/06/01(金) 22 12 05 ID ??? これでポケモンとのび太とノートは終了です。 たびたびの猿さんには焦りましたが、最後まで投下出来て良かったです。 この作品を書き終えれたのも、単に初心者である自分を助けてくれた皆さんのお陰だと思います。 本当に今までありがとうございました。
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前へ 一方、ゲート前にはのび太とジャイアン、及び大量のとけるを使った みがわりドーブルが待機していた。 そこにアンノーンが飛んできて、見張りを消したことを知らせる。 のび太「突撃OKだって。 もう行く?」 のび太が聞いた。 ジャイアン「行くか………。」 ジャイアンも同意する。 のび太とジャイアンは静かにゲートを開けた。 やはり中には誰もいない。 のび太とジャイアンはそそくさとゲートを抜け、 ドーブル数匹とアンノーンに先を偵察に行かせる。 五分後、アンノーンとドーブルが帰ってきた。 ドーブルは二匹程減っていた。 のび太が先に進んでいいか聞くとアンノーンはよいと答えたので そのまま先に進むことにした。 コガネ内部にもやはり雨は降っている。 そこには誰も居なかった。恐らくドーブルに消されたのであろう。 今回二人に突入させたのは最終決戦の戦いを有利に進めるため。 故に奴らに人の侵入がバレるのは得策ではない。 ここ一週間のドーブル作戦もこの侵入の為の布石。 人員を削るのはオマケにすぎない。 二人は建物の影に隠れながら先を進む。 雨と緊張の為か疲労が大きい。 ここ数日の連続戦闘もたたっているのだろう。 ジャイアン「そろそろラジオ塔の前だな………。」 ジャイアンが小声でのび太に言いのび太は頷く。 ジャイアン「俺はここでもしもの為に待機する。 のび太、とりあえず行ってこい。 何かあればすぐ駆け付けるから。」 のび太「うん。」 のび太はそう言い二人は別れた。 多分スネ夫にしても、ここまで誰にも見付からず侵入できているのは 計算外のラッキー。 もしかしたらスネ夫の報告以上にロケット団の連中は熱中症で 倒れてるのかもしれない。 ここまで上手くいくからには最後まで完璧にしたほうがいい。 雨の降り頻る中、ジャイアンは息を殺していた。 大量のドーブルと一緒にいると目立つのでそれらは路地の死角に全て隠してある。 ジャイアン『のび太と別れてからもう10分程………。 塔の中からは誰も出てきていないな………。』 ジャイアンの役目は、突入のサポートするためラジオ塔の動きを監視すること。 ただ監視するだけならアンノーンにも出来るが この任務は場合によっては敵の足止めもしなければならない。 そこで適任を考えた結果、一行の中で最も戦闘能力の高い ジャイアンが選ばれた訳だ。 しかし、悲しいかな、ジャイアンは飽きっぽい。 この単調な作業に飽きてきた。 余りに変化のない状況に欠伸をした時だった。 ジャイアンの2.0の視力はラジオ塔から二つの人影が出てきたのを捉えた。 ジャイアン「あいつらは…………。」 ジャイアンは必死に記憶の糸をたぐりよせた。 ジャイアン『確か男がコウ。 女の方はどっかの町の名前だったな………。 ヒワダだっけか?』 ジャイアンは監視を続け近所の子供達にも「地獄耳」と 恐れられる驚異の聴力で二人の話を聞く。 コウ「……部下からの連絡が途絶えました。 また消されたようですね。」 コウが耳から通信機のような物を外し言う。 キキョウ「あんたやトシミツ様の言う通りあのドロドロは町中に侵入してきたようね。」 ジャイアン『ドロドロ………? あ、スネ夫のドーブルの事か。』 ジャイアンは素早く思考を働かせ考えた。 しかし、話を聞くのを怠った訳ではない。 とりあえず、ラジオ塔から幹部の二人が出てきたのをアンノーンに伝え、 のび太に伝令させる。 コウ「しかし、トシミツ様の言う事に間違いはないんでしょうね? もし間違っていれば連中の駆除どころか私らが消されかねない。」 コウが心配そうに言う。 キキョウ「大丈夫よ。 トシミツ様の言うことに間違いはないわ。 とりあえず駆除に向かいましょ。」 ジャイアン『ヤベエな…… もう気付きやがった……。』 ジャイアンは唇を噛む。 奴らの言動から考えるに、ドーブル駆除ということはこれから町に 繰り出すのは間違いない。 その場合のび太とは高い確率で遭遇するだろう。 足止めしようにも、まさか幹部クラスが二人も来るとは思い浮かばなかった。 連中も幹部ならあのスターミー野郎と同じくらいの力量を持っているに違いない。 自分がいかに強くなっていたとしてもカホウ二人分には恐らく勝てないだろう。 しかし、このままではその戦力をもろにのび太が受けてしまう。 行くべきか、黙するべきか。 思考より体が先に動くジャイアンも、この葛藤に悩まされていた。 コウ「まあ、やるだけはやってみましょう。 キキョウさん、行きますよ。」 コウはそう言い歩きだした。 ジャイアン『ヤベエ! こっちに来た。』 ジャイアンは息を潜め気配を殺した。 ぴちゃぴちゃ。 コウとキキョウの足音が聞こえる。 ジャイアン『くそっ! 見つからねえでくれ!』 ジャイアンは強く念じお祈りのポーズをとる。 ジャイアンの願いが通じたのか、その足音は次第に遠くなってゆく。 ジャイアン『助かったか………?』 ジャイアンはホッとした。しかし、 「ピルルルルルルル。ピルルルルルルルル。」 雨の中に渇いた電子音が響き渡った。 ジャイアン『な、なんだ!?』 ジャイアンはあわてて自分のポケットを見た。 そして、音の発生源が自分のポケギアであることが解り、すぐに電源を切った。 ジャイアン『ヤベエ! 絶対見つかった………』 あれほど大きな電子音が響いたのだ。 奴らが気づかない筈はない。 ジャイアンは恐る恐る、物陰からコウ達がいた所を見た。 ジャイアン『あれ………?』 奴らは居なかった。 ジャイアン『もしかして、雨で奴らにはこの音が聞こえずに、 先に行ってしまったのか? まさか俺様ラッキー!?』 ジャイアンはそう思い、ホッと胸を撫で下ろした。 しかし、ジャイアンの安心感は無惨に崩れ去る事になる。 誰かの手がジャイアンの肩に触れたからだ。 コウ「こんにちは。」 コウ「君はあの時の………。 まさかこの戦線に参加していたなんてね。」コウがジャイアンの肩に 触れながら不気味に笑う。 ジャイアン「うおあああああ!!」 ジャイアンはコウの手を振りほどき、反射的にその場から逃げ出した。 ジャイアン『ヤバイ……! ここは逃げるしかねえ!』 慌てて逃げるジャイアンを見てコウが言う。 コウ「つれないですね………。 ねえ、キキョウさん。」 キキョウ「逃がさないわよ………。 アリアドス!くものす!」 ジャイアンの退路にクモの巣ができ、逃げられなくなる。 キキョウ「これで逃げられない………」 キキョウは冷たく笑う。 ジャイアンは絶望的な危機に頻していた。 だがジャイアンにはスネ夫に言われたこういうときのための 最後の策が用意されている。 ドーブルのテレポートだ。 ジャイアン『ドーブル達がこっちに来るまで時間を稼がねえと……』 ジャイアンは思考をフル回転させた。 ジャイアン「ちょっ、ちょっと待て! 取引しねえか?」 キキョウ「取引?」 ジャイアン「ああ、取引だ。」 上手い具合いに乗ってくれた。 後は時間を稼ぐだけ。 ジャイアン「あのドロドロの正体を知りたくねえか?」 ジャイアンは会話で時間を稼ごうとする。 ドーブル達とはクモの巣を隔てているが、 液体状になってる連中なら突破出来るだろう。 ドーブル達もこの状況に気づいたかゆっくりとこちらへ向かってくる。 ジャイアン「そもそもな、お前らが………」 ジャイアンは無い頭を必死で駆使し、時間を稼ぐ。 奴らは雨の視界の悪さでドーブルには気づいていないようだ。 ドーブルとジャイアンまでの距離は確実に短くなる。 あと30m 20m……… ジャイアンが絶対絶命のピンチに頻しているとき、 のび太はコガネのポケモンセンターにいた。 のび太は口元を弛め、センター内に用意してある公衆電話の電源を切り、 辺りを見回す。 ジャイアンを見て来いと言ったので、周りにアンノーンはいない。 のび太『これで厄介な奴が死んでくれた。』 のび太の顔が醜く歪む。 ジャイアンのポケギアを鳴らしたのは彼である。 そもそも、のび太にとって、ジャイアンの存在は、最も邪魔であり厄介であった。 まず、奴らの中でドラえもんは、名前を知っていてラクに殺せる。 スネ夫は、ポケモンの応用力、戦術力は高いがかなりのレベル不足。 スネ夫が団員を拉致している間、のび太達は、送られてきたロケット団相手に、 経験値、及び戦闘経験を積んでいた。 正直、現在戦闘という面では自分より圧倒的に弱い。 故に奴はノートで殺せなくても、問題は、なんらない。 だが、問題はジャイアンである。 明らかなる偽名(というかニックネーム)により、ノートでは殺せない。 しかも、奴は、完全なるバトルマニア。 手持ちの強さなど足下にも及ばない。 故に、コイツを殺すにはチャンスと安全な策が必要。 ノートや戦闘で殺せないなら違う方法を採ればいい。 それは、ジャイアンをハメて、コガネで戦死させる事である。 のび太「奴と幹部………。どっちが勝っても得をすんのは俺。 決行まで、いい案が思い浮かばず、小手先の策となったが、 まさか、ここまでうまくいくとは思わなかったぜ。 確実に流れは俺の方へ向いてるな。キシシシシ。 もう、キツネ顔の注文も済ませた事だし、この街に用はないな。」 のび太はそう呟き、うすら笑いを浮かべながら、ポケモンセンターを後にした。 一方、のび太の策に、まんまとハマったジャイアンに視点を戻す。 ジャイアン「それでな、その青狸がな………」 ジャイアンは相変わらず、時間稼ぎをしていた。 しかし、生まれつきの頭の悪さか、まともな会話ができていない。 黙って話を聞いていたキキョウも、流石に不信感を抱く。 キキョウ「あんた………、何か話を先伸ばしにしようとしてない? なんというか、時間を稼いでるような………」 目を細めてキキョウが訊く。 ジャイアン「そそそそ、そんなことねえよ!!」 ジャイアンは慌てて誤魔化す。 ジャイアン『バレたか………。 まあいい。 ドーブルまで後10m程だ。 この間合いなら、女の方の攻撃は受けても、男の方は間に合わない。 要は逃げれりゃいいんだ。』 ジャイアンはドーブルの方をチラリと見る。 もう、すぐそこだ。 ジャイアン『ふん。俺の勝ちだな。』 しかし、ジャイアンが勝ちを確信したときだった。 ボンッ、と音がして、液体状だったハズのドーブルが、本来の姿をさらけだした。 ジャイアン「なんで!? 何故液体化したドーブルが……」 予期せぬ突然の事に驚くジャイアン。 その様子を見て、コウがクスクスと笑いだした。 コウ「くくくくく…………。 流石はトシミツ様。 歳の功とは恐ろしい……。」 キキョウ「しかし、危なかったわ………。 全然気付かなかった。 ありがとう。コウ。」 雨の中で、コウと、キキョウの会話が飛び交う。 ジャイアンはただ呆然としていた。 ジャイアン「何故だ……?」 意気消沈とするジャイアンに、コウが言い放つ。 コウ「何が起こってるか分からないのかい。 なら、向こうを見るといいよ。」 コウは、そう言いドーブル達の方を指さした。 ジャイアンはそれに従い、指さされた方を見る。 ドーブル達の「とける」が次から次に解除されていっている。 ジャイアンはしばらく、それに目を奪われていたが、じきにドーブル達の上に、 黒いモヤがかかっているのに気付いた。 ジャイアン「あれはまさか………。 くろいきり?」 コウ「ハッハッハ! そうだよ!まさに、その通り! ちなみに上を見てごらん。」 コウが笑いながら、今度は上空を指差す。 ジャイアン「あれはクロバット!」 キキョウ「その通りよ。」 キキョウが言った。 そしてコウが説明を始める。 コウ「あなた達の攻撃が、「とける」を使ったポケモンということは 予測はついていました。 (まあ、トシミツ様は水の中で生きれる事からシャワーズか、 ベトベター推測してたんですけど。) だから、それを解除させる為に上空からクロバットにくろいきりを散布させながら 飛ばしたんですよ。」 コウの言葉にジャイアンは唇を噛む。 ジャイアン『くそっ! 雨のせいでクロバットにもくろいきりにも気付かなかった……。 恐らく今までいた見張りも、地上に注意を向けさす為の布石……。 奴らはだから安心してあまごいをしたんだな……。』 ジャイアンはチラリとドーブル達を見やる。 ドーブル達とは「くものす」で分断されている。 「とける」を解除されたドーブル達は「くものす」を抜けれず、 最早どうしようもない。 絶望にうちひしがれるジャイアンに、コウが笑いかける。 コウ「さあ、とりあえず君をどうしようかな。」 キキョウ「決まってる。」 そう言い、キキョウが身構える。 ジャイアンにはもはや、戦闘しか道は残されてはいなかった。 ジャイアン「畜生!いけっ、ヘラクロス、オーダイル!」 ジャイアンは、そう言いポケモンを繰り出した。 キキョウ「そうこなくちゃ!」 キキョウも腰のモンスターボールに手をかける。 だが、ただ一人コウだけは動かない。 キキョウ「コウ? どうしたの?」 不審に思ったキキョウが訊いた。 コウは笑いながら答える。 コウ「キキョウさん。 こいつは僕達が戦うまでもありません。 巻き込まれないように、避難しましょう。」 キキョウ「は?」 コウはそう言い、キキョウを半ば強引に連れラジオ塔の方へ歩いて行く。 ジャイアン「なんだ!?逃がしてくれんのか!?」 ジャイアンが訊く。 ジャイアンにはコウの行動の意味が解らない。 尚も、コウとキキョウはラジオ塔を目指し歩く。 そして、ラジオ塔の入口の前に行った時、コウが言った。 コウ「逃がす?そんな馬鹿な。逃がしはしませんよ。気付いて下さい。 今は雨ですよ? ねえ、カホウさん。」 ジャイアン「なっ!?」 ジャイアンが気付いた時にはもう遅かった。 ラジオ塔の頂上からカホウとスターミーと、大量の水が流れてきた。 スターミーのなみのりは、ジャイアンとドーブル達、 及びそこにあった物全てを跡形も無く洗い流した。 ジャイアンがカホウの水に呑み込まれてから一時間後、 アンノーン達はその事をスネ夫に報告していた。 アンノーン「ジャイアンがやられた。 津波に呑み込まれて行方が分からない。」 スネ夫「なんだって!?」 スネ夫はアンノーンの報告に驚きを隠せなかった。 スネ夫は暫し黙っていたが、やがて口を開いた。 スネ夫「わかった………。 とりあえず、ジャイアンを捜索してくれ。」 スネ夫はそう言い、アンノーン達を追い出した。 スネ夫「くそっ!」 スネ夫は机にやるせない気持を全てぶつけた。 アンノーンの話では、あの一撃はジャイアンを死においやるには 十分な威力だったという。 確かにそうかもしれない。 前回は、雨が降っていなくて、しかもポケモンが盾になってあの威力だったのに、 今回は雨の中でモロになみのりを食らってしまっていたらしい。 ここまで響いてくるあの音から想像するに、 アンノーンの言うことに間違いはないだろう。 一番の戦力であったジャイアンを失ったのは大きなディスアドバンテージだ。 しかし、言い方が悪いがジャイアンは死んでも作戦になんら問題はない。 余りこんな言い方はしたくないがむしろ、人質にならない分、死んだ方が好都合。 本当に死なれて困るのは、のび太だ。 ドーブルの正体は奴らに見破られた。 まあ、これは計算通り、というより好都合か。 しかし、のび太に死なれてしまうと、全ては台無し。 ジャイアンの死も、ドーブルの能力が知られたのも、全て無駄になってしまう。 スネ夫「のび太が生きていれば……。 でも、ゲームを脱出すれば生き返るとはいえ、ジャイアン……。 くそっ!」 やっぱり策より、友達。 策は幾等でも後で変更できる。 今はただ二人に生きていて欲しい。 スネ夫はさっき、少しでもジャイアンの死を好都合と考えた自分に、 腹が立ってしかたなかった。 次へ
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前へ のび太「なんだ、なんだ、なんだ!?」 ドラえもんが驚いていると、ドアからのび太が飛び出してきた。 外ではサイレンが鳴っている。 センターの人達も様子を見に行ったようだ。 ドラえもん「突然、外で爆発音がしたんだ。 まさか…………」 のび太「時間犯罪者!?」 のび太が叫ぶ。 ドラえもん「いや、まだ分からない! とにかく、もしそうだとしたら、奴はエンジュに居る僕らを 直接狙っているということになる」 ドラえもんが言った瞬間、 「ドカァァァァァァン!!!」 また、爆発音が聞こえた。 のび太「ドラえもん!! 行ってみよう!」 のび太が急かすが、ドラえもんは少し間をとる。 このまま、いぶり出されるように行くのは、正直危険。 だが、行けば時間犯罪者の姿を確認できる可能性が高い。 虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。 ドラえもん「よし!行こう!!」 のび太「うん!!」 ドラえもんとのび太は部屋を飛び出した。 一方、エンジュの焼けた塔前でのこと。 この街のジムリーダー、マツバは重要文化財である焼けた塔を 爆破している男を止めるべく、現場に駆け付けていた。 現場には町中の住人が野次馬となって来ていた。 マツバ「何だって言うんだ? 一体?」 マツバに聞かれたジムのトレーナーは無言で指を指す。 「うぐ、うぐぐぐぐ、爆!漠!縛!幕!博!莫!」 その方向には、まさに常人の精神を持っているとは言いがたい人物がいた。 マツバ「狂ってるとしか言いようがないな…… しかし相手は奴一人だ。 何故とり押さえない?」 マツバが聞いた瞬間、 狂人「しねラァァァ!! だいばくはつ!!!」 二体のイシツブテが飛んでくる。 マツバ「伏せろ!!!」 「ズワアアアアアン!!!!」 凄まじい爆音が響き渡る。 狂人「もどりぇ、イシツブテ」 変質者はイシツブテを手元に戻し、元気の欠片を使う。 マツバ「くそっ………! 危険すぎる!!! しかもこれなら、何度でも爆発が可能ってことか!」 マツバが言うか早いか、変質者は第二撃を開始した。 狂人「氏ねねねね。」 マツバ達の方にイシツブテが飛んでくる。 マツバ「ゲンガー!! 止めろ!」 マツバはゲンガーを繰り出したが、間に合わない。 イシツブテから光が発され始めた。 「ピジョン!でんこうせっか!!」 その時、どこからともなく、ピジョンが飛んできて、イシツブテを弾き飛ばした。 遠くで爆発音が聞こえる。 マツバ「誰だい…………?」 マツバが後ろを向くと、見覚えのない冴えないメガネと、 見覚えのある青い狸が居た。 のび太「大丈夫でしたか?」 のび太が聞く。 マツバ「ああ、誰だか知らないが、ありがとう。 もう一人、君はドライモン?だっけかな?」 マツバに名を間違えられたドラえもんはすぐさま、それを正す。 ドラえもん「ドラえもんです。 ところで、マツバさん。 なんなんですか? あの爆発は?」 マツバは黙って指を指す。 そこには何処かで見たような顔があった。 ドラえもん「あ、あなたは!?」 のび太「船乗りのヨシト!?」 そう、のび太達の目の前には、アサギの灯台でのび太と戦ったヨシトがいたのだ。 しかし、あの時の面影は全くない。 のび太「ヨシトさん……… なんで……?」 のび太が歩み寄ろうとする。 しかし、ヨシトはまだ笑っている。 マツバ「伏せろぉ!!!」 マツバはのび太にのしかかった。 ヨシトの投げたイシツブテが爆発する。 のび太「マツバさん、ありがとう………」 のび太がそう言うと、マツバが訊いてきた。 マツバ「知り合いか?」 のび太は少し躊躇った様子で答えた。 のび太「前にバトルをして……… まさか………こんな……」 知り合いだというのび太の様子を察したのか、マツバが言う。 マツバ「わかった。 それなら、少々危険だが、無傷でとり押さえる。」 のび太「どうやって!?」 のび太の問いにマツバが答える。 マツバ「奴はだいばくはつを使わせた後、ポケモンを戻して、 元気の欠片を使うという、三つの動作を行う。 そこで、敢えてだいばくはつを使わせ、 三つの動作をしているスキを狙って取り抑える。」 マツバの言葉に、のび太は少し間を開けて言う。 のび太「……囮作戦ですか?」 マツバは頷く。 マツバ「だいばくはつを使わせる囮役は僕がやる。 君は彼を取り抑えてくれ。」 マツバの言葉にのび太はこくりと頷いた。 マツバ「よし、いくぞ! 作戦開始!!」 ヨシト「氏ね市ね史ね施ねえええ」 「グワーーン!!」 ドラえもん「くそっ! ヌオー!」 マツバとのび太が作戦を立てている間、ヨシトからの攻撃は ドラえもんが足止めをしていた。 しかし、だいばくはつを連発する相手に、流石のドラえもんも押され気味である。 すると、 マツバ「おい!貴様! 何でこんなことをする!!」 ヨシトの注意を引くため、マツバが叫んだ。 しかし、ヨシトは訳の分からない言葉をしゃべって話にならない。 ヨシト「えへえへえへえへ」 マツバは恐怖を感じたが、作戦の為に囮としての役目を果たさねばならない。 マツバ「こい!この低脳の基地外野郎!!」 ヨシト「ん~~? 施ね史ね市ね氏ね市ね氏ね イシツブテェ! だ・い・ば・く・は・つ」 マツバの方へイシツブテが飛んでくる。 マツバ「ゲンガー!! さいみんじゅつで止めろ!!」 ゲンガーのさいみんじゅつでイシツブテのだいばくはつが中断される。 そして、当然の如くヨシトはイシツブテを戻し、なんでもなおしを使おうとする。 マツバ『今だ!!! メガネ少年!!』 ヨシトから見えない影からピジョン、フーディン、ブーバーを従え のび太が飛び出す。 しかし、なんということか。 のび太は少し飛び出すのが遅れてしまった。 ヨシト「うわああああああああくるなああああああ」 のび太に気付いたヨシトは、のび太に向けてイシツブテの入った ボールを投げつける。 ドラえもん「のび太君!!!」 イシツブテがボールから飛び出し、光だす。 ドラえもんが叫ぶ。 のび太「うわああああああああ!!!」 「ドガーーン!!!」 辺りを揺るがす激しい爆発が起こり、それがのび太を包む。 ドラえもん「のび……太……君…?」 周囲は砂塵に支配され、静寂が響く。 ドラえもんはのび太の無事を願った。 しかし、そこは何もかもが跡形もなく吹っ飛んでいた。 ドラえもん「のび太君が……跡形もなく……」 ドラえもんは呆然とし、思考は中断した。 しかし、また、ある声で動き出す。 ヨシト「ひっ、ひっ、人が……吹っ飛んだ……跡形もなく…… 俺が……やった?」 ヨシトも呆然としているが、やがて、 ヨシト「うがああああああああ!!! 人をおおお人をおおお!!!」 ヨシトは完全に発狂し、自らの周りにイシツブテを二体、 クヌギダマを一体繰り出した。 それらはやがて、光をおびはじめる。 マツバ「まさか……………。 ヤバい!! 皆!!伏せろぉぉぉ!!」 マツバが叫んだ瞬間、ヨシトの周りで凄まじい爆音が轟いた。 その頃―ワカバタウンで、不審な男女二人組がいた。 別に、この時間帯でうろつくのは、田舎町のワカバタウンでも おかしいことでもないし、その二人が挙動不審なことをしていた訳でもない。 ただ、その服装は、未来の服を思わせ、胸には大きな赤い拳のマークがある。 そのうちの一人、男の方が言う。 男「…………此所に、辿りつけたのは、俺達だけか………。 他の奴らは…………。いや、考えるまい。」 男はしみじみと周りを見回す。 一体、この世界はどんな世界なのだろう。 女「町の外を見てきたわ。 見たこともない生物がいる。 やはり、ここは異次元空間ね。 何故、この時代にあるのかはわからないけど。」 女は言った。 こちらの心を見透かすように。 男「なんにせよ、任務の為、この世界の情報は必要だ。 それに、ここは恐らく誰かに創られた次元。武器や、通信機器、 特定の道具が全て消えてしまった。 それに、お前の能力は情報収集に向いているからな。」 男の言葉に女が頷く。 すると、女は何処かへ行ってしまった。 男「この仕事に失敗は許されない…… 何故なら、この為に俺達は生まれてきたようなものだからな……」 そう呟くと、男は犠牲になった友人達に祈りを捧げた。 マツバ「うえっ……、酷いな……」 ヨシトの体の惨状は凄まじいものだった。 それを書くのは気が引けるので、ここでは省略させてもらうが。 そして、ドラえもんはショックの余り、立ち尽くしていた。 この世界の死、則ち現実の死ではないことは分かっているが、流石に気がめいる。 それより、ジャイアンとスネ夫に、作戦前にこの事を伝えなければならないのは 考えただけでも辛かった。 マツバもそれを察したようで、 マツバ「………君は、もう帰ってもいいよ。 話は明日聞くから……」 と、言ってくれた。 ドラえもん「わかりました………」 ドラえもんは重い足を、ポケモンセンターに向かわせた。 ああ、なんで、頼まれたからといって、皆をこの世界に連れて来たんだろう。 僕のバカバカバカバカバカ。 ドラえもんが失意に陥っているとき、目の前から人影が現れた。 その人影は近付くにつれ、鮮明になる。 そして、それは自分が最も安否を気遣う人物だと解った。 ドラえもん「のっ、のび太君………?」 のび太「ドラえも~ん!!」 ドラえもんはのび太に抱きつく。 ドラえもんの目からは、涙が出てきた。 ドラえもん「のび太君! なんで無事だったの?」 ドラえもんは泣きながら聞いた。 のび太「話せば短いんだけど、実はビリリダマが爆発したとき、 フーディンのテレポートで逃げたんだ。 それで、ここまで来るのに時間がかかっちゃった。」 ドラえもん「あっ………」 成程。 確かにのび太が爆発で死んだのなら、跡形もなくなるのはおかしかった。 のび太より明らかに強い爆発で死んでいたヨシトは、まあ、あれではあったが 体はちゃんと残っていた。 少し考えれば分かることだが、自分としたことが、動揺して考えつかなかった。 ドラえもん「まあ、良かったよ。 とりあえず、ポケモンセンターまで帰ろう。」 ドラえもんは、そう言うと歩きだした。 無事だったのはいいが、のび太がまだ警戒する存在であることに変わりはない。 この世界では自分達、プレイヤーが干渉しない限り、人が死ぬことはない。 それ故、ヨシトの死も、ゲーム内の誰かの干渉によるものだろう。 それの元凶は恐らく99%、時間犯罪者。 だとしたら、常に自分が監視していたのび太が黒である可能性は低い。 しかし、しずかの時といい、奴は遠隔で人を殺せる。 それがある限り、警戒を緩めるべきではないが、 ヨシトの死は見る限り、どうひいきめに見ても自殺。 故に殺されたとは考えにくい。 だとしたら、のび太ではない人物が直接ヨシトに催眠術などの、なんらかの操作を施した可能性が高い。 しかも、もしのび太が時間犯罪者としたら、わざわざ、自分の前に現れるだろうか? 死体がないことから、のび太=時間犯罪者だとバレても、フスベで待ち伏せ作戦を採った方が得策ではないのか? ここで、自分が殺されるということも考えられるが、手持ちのレベルや、相性からいって恐らく無理。 それに、もし能力で殺すのなら、やっぱりわざわざ自分の前に現れる必要がない。 やはり、のび太はシロなのか? 考えれば考える程、深いループにはまっていく。 ドラえもんが、その様な思索に耽っている内に、 二人は再びポケモンセンターに着いていた。 ドラえもんとのび太はフロントで部屋の鍵を受取り、各々の部屋へ向かう。 そして、二人がそれぞれ、部屋に入ろうとしたとき、ドラえもんが言った。 ドラえもん「のび太君、ヨシトさんの事は明日話すよ。 今日は、色々あったから、明日の為にゆっくり寝た方がいい。」 のび太「うん、そうする。おやすみ。」 ドラえもん「おやすみ。」 二人は、そう言い合うと部屋へ入った。 ドラえもんは部屋に入った瞬間、またポケットから蚊メラを取り出す。 やはり、疑いは若干晴れたとはいえ、完全にシロとは言えないし、 もし、この状況でのび太が時間犯罪者なら、自分が殺される。 多分ないと思うが、あのタイミングからいってヨシトの凶行は のび太の挿し金の可能性もある。 自分の身を守る為にも、ここで妥協するわけにはいかない。 ドラえもんの盗聴は朝まで続いた。 のび太は部屋に入るとすぐにベッドの上で横になった。 こみあげる笑いをこらえながら。 のび太の策は、ドラえもんがチェックインの時に書いていた名前を見る (書いていた時に名前を見れなかったのはのび太最大のチョンボだったが)という 単純な策であった。 しかし、それには問題があった。 あの忌々しい青狸の盗聴である。 部屋から出るのは、単独行動になり、青狸のお付きがつくので不可。 それに、わざわざ名簿を見せてくれと言うのはあからさまに妙だろう。 それ故、フロントの名前を見るには、センターの職員及び、 糞狸達をセンターから引き離すことが必要だった。 そこで今回、ノートの隠された力を使わせてもらった。 このルールは、メガネにも話していないが、実はこのノート、 対象者の死の前の状況、死因、命日をある程度操作することが出来る。 ノートに記入したのは以下の通り。 名前【ヨシト】 死因【爆死】 手持ち【ニョロゾ・メノクラゲ・ドククラゲ】 死の前の状況【ショップで出来るだけ多くの元気の欠片を買い、 アサギから自転車でスリバチ山へ向かい、 時間に間に合うようできるだけ、じばくの使えるポケモンを捕獲。 その後、発狂しながら、エンジュの重要文化財を襲撃。 襲撃中、人を殺したと思い込み、200×年×月×日午後7時30分自殺】 まず人の目につき、この町のシンボルである文化財を破壊することにより、 ポケモンセンターの職員を引き離す。 青狸も当然現場に向かう。 その時点でポケモンセンターはもぬけのカラ。 何故、人を殺したと勘違いするという条件をつけたのかは、 自然な形でテレポートを使い、ポケモンセンターに戻るため。 戻れば無人のポケモンセンターで優々と名簿を見ればよい。 しかし、これも、実行するにはネックがあった。 それは、青狸の監視の可能性。 もし、監視されていた場合、これを実行すれば殺害方法もバレ、 確実にアウトだろう。 しかし、盗聴のみならノートを使い、これを実行することは極めて容易。 だから、青狸が監視をしているか、していないかを確かめる為に このポケモンを使った。 それはラッタ。 この一週間、一緒にいたお陰で、俺は奴がなぜか、ネズミのたぐいが嫌いで、 見たら発狂しだすことを知っている。 だから、敢えて部屋の中でラッタを繰り出し、 視覚のみの情報を送り続けることにより、奴の反応を確認。 全てのポケモンを繰り出したのは、ラッタだけ出すと余りにも不自然で後々、 疑われる可能性があるから。 そして、奴の反応から少なくとも監視はしていないと判断し、この計画を実行した。 しかし、奴は計画の為には今は殺せない。 いや、殺すと策の成功率が低くなると言った方が正しいか。 とりあえず、明日はあの女に腕をみせつける日だ。 もう、起き続けてる理由もないし。 寝よう。 のび太は修行の疲れを癒すべく、床についた。 次へ
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前へ 荒筋 ドラえもん達はコガネのイベントをクリアするため、 各々の力を上げようと、別れ別れになった。 ジャイアンは、チョウジタウンのヤナギの元に、 氷の抜け道でとけないこおりを入手することを条件に弟子入り志願をする。 そこで、ブリザードに大苦戦の末、機知により逆転。 ヤナギに弟子入りを認めてもらった。 ドラえもん達が、エンジュから離ればなれになってから丁度一週間が過ぎた。 今までは、ジャイアンとスネ夫達の行動しか語っていなかった。 しかし、だからといって、その間のび太とドラえもんが 何もしていなかった訳ではない。 二人は、ちゃんとコガネでの決戦に使えそうなポケモンを集めていたし、 レベル上げもしっかり行っていた。 まあ、その修行や旅は、別に特筆すべきものではなかったので、 このように割愛した訳である。 しかし、修行最終日のこの日は話のスポットを彼らに向けてみたいと思う。 二人は修行最終日の今日は体を休めようということで、 ポケモンセンターで早めの宿を確保した。 ドラえもん「のび太君、よく今までの修行を堪えたね。 僕は嬉しいよ」 ドラえもんが言う。 のび太「うん! しずかちゃんを助けるためだからね!」 のび太『んなわけねぇだろwww』 ドラえもんはのび太の心内などつゆ知らぬ様子で、言った。 ドラえもん「じゃあ、今日は特別だ。 スイートに泊まろう。」 ドラえもんはそういい、受付にスイートルームのチェックインを始めた。 のび太「えっ、ドラエモン……、スイートってあのとんでもない高い所?」 のび太が驚く。 しかし、ドラえもんは明るい表情のまま答える。 ドラえもん「うん、今日くらいはゆっくりしなきゃ! あっ、個室二つで。」 のび太「えっ、なんで二つなの?」 またのび太が聞く。 ドラえもん「言ったでしょ。 今日くらいはゆっくりしなきゃって。 修行を堪えたご褒美だよ。 淋しいのなら大丈夫。隣だから。 じゃあ、明日に備えてゆっくりしよう。」 ドラえもんはそう言い、鍵を取った。 のび太「成程、じゃあゆっくりするかな。」 のび太もそう言い、二人は各々の部屋の前へ向かった。 ドラえもん「じゃあ、おやすみ。」 のび太「おやすみー」 二人は、その後、部屋に入り、扉をしめた。 ドラえもん『……やっぱり何か、おかしい。』 ドラえもんは部屋に入った後、ベッドの前の椅子に腰を降ろし、溜め息をつく。 ドラえもん『この一週間……やっぱり何か違和感を感じた……』 実はドラえもんは、イベントクリアの為にコガネへ向かう時から、 もしかしたら、自分らの中に時間犯罪者がいるのかも知れない という考えを抱いていた。 根拠はいくつかある。 例えば、時間犯罪者の殺人が自分達の周辺のみでしか起こっていないこと。 タンバのシジマ、後になって知ったが、アサギのミカンや、 灯台のトレーナーも何人か死んだらしい。 始めは、自分らを追跡しているが故だと思っていたが、 自分達をイベントクリアに利用するのならば、時間犯罪者が 自分らを追跡する利点が全くない。 すぐにでもフスベへ向かい、自分達がイベントクリアを遂げるのを待てばいい。 しかし、フスベに居る出木杉達はトレーナーが死ぬのなど 全く見たことが無いと言っている。 故に、時間犯罪者はフスベにはいない可能性が高い。 ならば、何故、利点の塊であるフスベ行きをせず、自分らを追跡しているのか。 答えは、恐らく、それが出来ないから。 何故できないのか。 考えられるのは、奴自身が身動きのとれない立場にいること。 そこでドラえもんの頭にあることが浮かんだ。 内部犯である。 しかし、自分達の誰かがそんな事をするとは考えにくい。 だが答えはすぐに頭の中に浮かんだ。 味方がどこかで、奴とすりかわってしまった可能性があることである。 それなら、全てのつじつまが合う。 ミカンには全員が会ったし、灯台も全員で通った。 更に、自分達の一行に潜めば、自分達について行かざるを得ない。 では、最も怪しいのは誰か。 のび太である。 本人によれば、所持バッジは0、会った時には、何故そこに来れる? と、首を捻るようなメンバーだった(ゲンガーを除いて)。 それに、死んだ、ミカンと最後に接触したのは彼だった。 かといって、確信や、証拠は無いし、皆の前で内部に犯人がいる 可能性があると、言った場合、結束が崩れる可能性がある。 それはなんとしても避けたかった。 そこで、皆に気付かれぬよう、のび太の監視をするために、 今回の解散を提案したのである。 ドラえもんやがて、腰を上げ呟いた。 ドラえもん「一週間………全く、証拠はつかめなかった。 のび太君が時間犯罪者であるのかも、ないのかも。 でも、何か、何て言うか分からないけど……。 仕方ない………これだけはしたくなかったけど………」 ドラえもんはそう言い、自らの腹のポケットをあさりだした。 のび太『やっぱり、アイツ、俺を疑っていやがった。』 のび太はスイートルームのおっきなカビゴンの上にのしかかりながら考えていた。 あの青狸と過ごした一週間、全く奴は自分に対し、 なんのアプローチも仕掛けて来なかった。 恐らく、この修行の旅も、自分を監察するためのものだろう。 それならば、この後に控えているイベントの為にも少なくとも奴は、 この旅で自分がクロかシロかの証拠を掴まねばならない。 だとしたら、恐らくこのスイートルームは青狸の罠。 大方、盗聴でもしているのだろう。 いや、下手したら監視もしているのかも知れない。 だとしたら、この中での言動は控えた方がよいだろう。 しかし、おとなしく時が過ぎるのを待つ訳にはいかない。 自分がこの旅の途中に考えた目的を達成せねばならない。 そう、それは奴の名前を知ること。 青狸は、皆からドラエモンと呼ばれている。 しかし、前タンバで奴の名前を書いたが死ななかった。 奴の正体は分かる。あのデザイン、腹の袋からして、約一世紀程前の猫型ロボット。 何故この時代に居て、耳が無く、メッキが剥げているのかは知らないが。 だがこのノートはこの世界ならロボットであっても、効果を発揮する。 だから、奴がロボットであるのは理由にならない。 やはり、名前が違うのか。 だが、奴がスイートに泊めてくれたお陰で、名前を知る方法が出来た。 しかし、奴の盗聴、監視、どちらか分からない限り、それは作戦のネックになる。 どうしたものか……? のび太は考えを巡らす。 一方、ドラえもんは部屋から蚊メラを外に放った。 スパイ衛生もあるが、室内は映しきれない。 かといって蚊メラを直接、のび太の部屋の中へ入れるのは無理だろう。 蚊メラは見た目は普通の蚊だし、恐らく即叩かれて終了だ。 しかも蚊メラは機械製だから、破壊されたら確実に監視していたことがバレる。 だから、蚊メラを外に待機させて、せめて、中の状況を聞くことが精一杯だった。 ドラえもん『頼むよ………蚊メラ……』 そう思い、ドラえもんは蚊メラを外に放した。 のび太「…………………」 のび太は一言も喋らず、部屋の中で思考を巡らせていた。 やはり、監視、もしくは盗聴されてることは、 これが最後のアプローチのチャンスということから考えて必死。 奴には、いつも「単独行動はやめてね」と口を酸っぱくして言われていた。 だから、部屋外への移動は監視、盗聴されているのなら不可能。 だから、手持ちポケモン、及び、部屋にあるもので奴が監視しているのか、 それとも盗聴のみなのかを確認しなければならない。 この一週間で俺のメンバーも大分変わった。 ブーバー、ラッタ、フーディン、ピジョン、そして、俺、ゲンガー。 ……………。 そうだ、こいつを利用して…………。 のび太はそう思い、モンスターボールから全てのポケモンを解放した。 ドラえもんは部屋で蚊メラの音を聞いていた。 ドラえもん「あれから音沙汰無いな……… どうしたのかな………?」 蚊メラからの連絡は全くない。 一度ポケモンを出した音がしたが、気にすることはないだろう。 すぐ戻していたし。 蚊メラの集音機能は二十二世紀仕様なのでかなり高い。 それが、一時間の間何の音も拾う事が出来ないのだ。 ドラえもん「まさか、僕の思い過ごし……………?」 ドラえもんにそのような考えが浮かんだ瞬間だった。 「ドガァァァァァァン!!!!」 突然、大きな爆発音がなり響いた。 次へ
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のび太(出展:ドラえもん 原作:なし ) □プロフィール(暫定) 別名スリーピングスナイパー 元人間。現在はモノクマに改造された改造人間。射撃の腕は某ヘイへ並み □キャラ情報
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前へ 所変わってラジオ塔最上階。 長身の銀髪が初老の男性にひざまづいている。 コウ「…………という訳で、私共は奴らを撃退しました。」 参謀のコウは、今回の出来事について話していた。 トシミツ「それで、撃退した子供はどうした?」 コウ「それが……。 なみのりで流れていってしまって行方不明でして……。 捜索は続けているのですが、全く見つかりません。」 トシミツ「そうか、そうか……。」 トシミツはコウの報告に一考する。 理想はその子供を見つけ、それを人質にドーブル本体の要求という流れだった。 しかし、見つからないのでは仕方ない。 それはあきらめよう。 トシミツ「やはり、籠城だな……。」 トシミツは誰ともなしに呟く。 雨の中、やってくるドーブルの対策が出来た今、無理をすることもあるまい。 カホウには負担だが、後二週間、雨を降らし続けてもらおう。 心の中でトシミツはコクリと頷く。 トシミツ「よし、コウよ。 下がってもよいぞ。」 その時、 「バン!」と扉が開いた。 見ると、団員が息を切らせている。 コウ「どうしました?」 コウが訊くと、団員は息も絶えだえに言った。 団員「ポケモンセンターが……、何者かにポケモンセンターが爆破されました!!!」 トシミツ「なにっ?」 団員の言葉に流石のトシミツも驚きを隠せなかった。 団員「それと、デパート内からPP回復の道具が奪われました! デパート、センター内を見張っていた者は全て消されています!」 団員の声には最早ヒステリックな物が混じっている。 続けて、コウも自分の考えを言う。 コウ「やられましたね……。 恐らく侵入者は複数。一人が囮になり、本隊がデパート、センターを叩く。 多分、先程のセンター爆破は時限装置でも使ったのでしょう。 あんな派手な音を出せば、自分らの存在が気づかれる事は必死。 奴らはそんな馬鹿ではない。 故に倒そうにも奴らはもうここにはいない。」 トシミツ「うーむ。」 トシミツが唸る。 ポケモンセンター、及びPP回復アイテムを盗んだのは恐らく、 あまごい封じと、籠城戦をさせない為。 持久戦に持ち込めば、回復が出来ない分、こちらが不利になることは明白。 あまごいも切れ、灼熱の太陽に焼かれながら無惨な敗けを噛み締めるだろう。 持久戦は出来ない。 ならば……。 トシミツは目を閉じ、こう告げた。 トシミツ「コウ、これから全隊、出撃準備。 奴らの陣に攻め込む。 今すぐにだ!」 コウ「なんですって!?」 コウが驚く。 コウも、次の手は突撃しかないとは思っていた。 コウ「お気は確かですか? 今からなんて……。」 コウが言う。 コウも次の手が突撃しかないとは思っていた。 しかし、今からとは予想もつかなかった。 余りにも無茶過ぎる。 コウの驚きをよそに、トシミツは指示を続ける。 トシミツ「攻撃目標は35番道路からエンジュシティのポケモンセンター。 奴らの意表をつく為に今からいく! さあ、コウ、全隊に指令だ!」 コウ「しかし……。」 コウがためらっていると、後ろの団員が言った。 団員「自分は、トシミツ様に賛成です。 トシミツ様のおしっしゃる事なら間違いはありません!」 団員は息を切らせ、一息でそれを喋りきった。 ギロリと団員を一睨みしてからコウが言う。 コウ「わかりました……。」 コウは渋々了承する。 トシミツ「それでは言った通りに……。」 コウ「はっ。」 コウはそう言うと部屋から出ていった。 それを物陰から聞いている人が一人。 キキョウ「突撃……。 この策は私達にかかってるわ……。 でも、注意するのは敵だけじゃなさそうね」 キキョウは誰ともなしに呟いた。 アンノーン「………というわけだ。」 スネ夫「そうか……。 一応作戦は成功したようだね。」 アンノーン達がスネ夫に報告する。 そこへ、ドラえもんがやってきた。 スネ夫「ドラえもん……。」 スネ夫はそれに気づき、声をかける。 ドラえもんのその表情から察するに、既にあのことを知ってるに違いない。 沈黙が暫し流れたが、スネ夫がまた口を開く。 スネ夫「のび太は、のび太は無事かい?」 ドラえもん「うん。 疲れて、向こうのテントで寝てる。」 スネ夫「そう……。」 スネ夫は肩をすくめた。 のび太もちゃんと仕事をした。 自分も頑張らねばならない。 スネ夫「のび太はジャイアンのことは知ってるのかい?」 スネ夫の問いにドラえもんは首を横に振る。 スネ夫「そうか。 ならのび太には知らせない方がいいな。 無駄に精神的プレッシャーを与えることになる……。」 スネ夫の言葉にドラえもんも同意する。 その後、ドラえもんに皆を呼んでくるよう頼み、ドラえもんを部屋から追い出した。 一人になった部屋で一人呟くスネ夫。 スネ夫「僕の作戦もいよいよフィナーレ。 後は乗るか反るか……。」 スネ夫は何ともいえない感じに体を震わせた。 それが、恐怖であったかどうかは分からない。 トシミツが全軍出撃の指令を出してから数分後、 コウは放送で今後の事を述べると、休憩室に腰を下ろした。 周りでは突撃前に、暇をもて余した団員達が雑談をしている。 トシミツを誉めたたえる話が大半だ。 コウ『てめえら、あの糞ジジイのどこが好きなんだよ。 カス共が。』 コウは不快感を感じ、休憩室から出ていく。 しかし、出ていってもあのイライラする会話が何処かで聞こえる。 今の団員達は皆、トシミツに保護されたり、恩を売られたりして忠誠を誓っている。 しかし、コウは違う。何者にも属さない。 コウの目的。それはロケット団を乗っとり、自分の物にすること。 コウ「突撃まで、後一時間……。 今回の事で思い知らせてやりますよ。 誰が頂点に立つものとしてふさわしいかを、ね。」 コウはそう呟いた。 コウの目には最早、自らの野望しか映っていない。 所変わって、また35番道路。 のび太、スネ夫、アカネ、ドラえもん、その他のトレーナー達が作戦の打ち合わせをしている。 スネ夫「……と、いうわけで、奴らはこれからエンジュを目指して攻撃してくる。」 スネ夫は机の上のコガネの見取り図を指さして言う。 スネ夫「連中はこれから、全戦力と全戦力との総力戦になると思っている。それの……」 ドラえもん「裏をかく!」 ドラえもんが合わせるように言い、一同は首を縦に振る。 スネ夫「連中はエンジュまで陣を拡げる為に、外に総力を向ける。 逆をつかれないように、南の方の守りも厳重になる。 すると、どうだろう。 中の戦力が手薄になる。 そこから、手薄な内部へ……。」 スネ夫が見取り図の中央を指差す。 スネ夫「のび太のテレポートで侵入!」 話を聞いていた周りも、スネ夫の作戦に感嘆の声を漏らす。 のび太をコガネに潜入させた真の狙いはこれ。 のび太に死なれて困るのもこの理由だ。 スネ夫「コガネ内部に侵入するのは、僕、のび太、ドラえもんの三人。 中途半端な戦力は相手に逆手に取られるからね」 のび太とドラえもんは緊張の面持ちで頷く。 スネ夫「アカネさんや、他のトレーナーさん達は突撃してくる奴らを食い止めてくれ。 あと、ドラえもん。」 スネ夫はドラえもんの方を向く。 スネ夫「あの人の協力は得られるのかい?」 ドラえもん「うん。 快くOKしてくれたよ。」 スネ夫の問いにドラえもんが答える。 これで、スネ夫の作戦にもう、問題はない。 スネ夫「何か質問がある人はいる?」 スネ夫が訊くと、のび太が恐る恐る手を上げた。 のび太「ジャイアンは? ジャイアンはどうしたの?」 のび太の禁断の質問にスネ夫はドキッとしたが、スネ夫が答える前にドラえもんが言った。 ドラえもん「じゃっ、ジャイアンは町に潜伏してるよ! 今はちょっと動けないだけ。 作戦は伝えてるから大丈夫さ!」 ドラえもんは無理に明るく振るまい、言う。 のび太「よかった……。 帰ってきてないから、何かあったんだと思ったぁ……。」 のび太『あの反応……。 予定通り奴は死んだようだな。 キシシシシ。』 スネ夫はゴホンと咳払いをし、もう一度言った。 スネ夫「他に何か質問はあるかい?」 その場にいた全員は、首を横に振る。 スネ夫「よし!じゃあ、皆それぞれの持ち場へ! 作戦開始!!!」 一同「オオーー!!!」 全員が、テントの外へ散っていく。 それぞれの思いが交錯するなか、確実に決戦の時は近づいていった。 「ん……?」 ある広い空間の中、ジャイアンは目を覚ました。 目がボヤけ、頭がガンガンする。 ジャイアンは一人呟く。 ジャイアン「ここは……。 頭が痛え……。なにも覚えてねえや……。」 するとそれに応える者がいた。 ボヤけていて、よく見えないが、何だか徳のありそうな人物だ。 周りには、数人のひ弱そうなメガネがいる。 ?「目が覚めたようだな。 ここはコガネ百貨店の地下だよ。」 ジャイアン「コガネ百貨店の地下……? 俺は奴のなみのりに流された筈じゃ…… っていうかあんたは誰だ?」 ジャイアンはいまだ本調子ではないのか、たどたどしい口調で言った。 ?「私かい?私ははずかしながら、ラジオ塔の局長をさせてもらっていた男だよ。 この通り、ラジオ塔はのっとられてしまったがね。」 ジャイアンは意外な人物に驚く。 コガネ住民は皆避難した筈だ。 ジャイアン「何故地下倉庫いるんだ? 避難したんじゃねえのか?」 ジャイアンの問いに局長はため息をつき、答える。 局長「奴らがコガネのラジオ塔をのっとった時、私達は町中に必死でこのことを伝え、避難させた。 そうしたら私達は町の外に逃げ遅れて、ここに逃げ込んだんだ。 奴らに見つからないように生活するのは苦しかったよ。」 成程。 全員のやつれた頬を見ると、どれ程の苦労かが分かった。 局長はまた話を続ける。 局長「ここ数日この空間の中は酷かった。 炎天下、酷い雨の中、デパートから、コソコソここまで物資の詰め込み作業をしなきゃならかったからな。」 その原因が自分達にあるとは口が割けても言えない。 局長「そして、私達は地下を脱出することにした! しかし、その方法が無い。 するとある日、仲間の内の一人が、外を巡回中に波間に浮かぶ君を見つけた。 全く動いてなかったから死んでいると思ったら生きているではないか! しかも天の恵みだろうか、君はトレーナーらしい。 これで奴らに対抗できる。そう私達は思った。 そして私達は君をロケット団に見つからないように地下倉庫に連れ帰った訳だよ。」 局長は声を荒げた。 ジャイアン「成程。 俺を奴らとの対抗戦力として使う気だな。」 局長は首を縦に振る。 ジャイアンは頭がようやくはっきりしてきた。 多分自分が生きているのは、突入前にドラえもんの目を盗んで勝手に使った「てきおうとう」のお陰だろう。 ちなみにスネ夫達にはこのことを知らせていない。 理由はジャイアンが使った瞬間、てきおうとうの電池が切れ、 「これはヤバイ」と思ったジャイアンはそのことを隠していたのだ。 まあ、今となってはそれが幸運となったが。 ジャイアン『俺の好奇心も捨てたもんじゃねえぜw』 ジャイアンは心の中で笑う。 一呼吸おいて、局長はまた話を始めた。 局長「そこでだ。君に頼みがある。 私達をこの街から出してくれないか? 君が気絶してる間に君のポケモンは見せてもらった。 オーダイルにカイリキー……、皆高レベルなヤツばっかりだった。 君ならここを突破出来るだけの力はある!!」 褒められて悪い気はしないジャイアン。 思わず口元が弛む。 そんなジャイアンを知ってか知らぬか、局長は殺し文句を吐いた。 局長「作戦は後で話すがやってくれるかね? 君だけが頼りなんだ! 男ならやってくれるだろう?」 ジャイアン「まかされよ!!」 ジャイアンは二つ返事で答えた。 局長「ありがとう! 作戦はまた後で話すよ。 とりあえず、今は体を休めてくれ。 30分後から作戦を話す。 そして一時間後に決行だ! それと、これは使っておいてくれ。」 局長は倉庫のダンボールから、回復アイテムやら、 技マシンやらドーピングアイテムを取り出した。 これで大きな戦力アップが望める。 ジャイアン「これだけ期待されて断ったら男がすたるぜ! よし!俄然やる気出てきた!! ついでにあの水ヤローもとっちめてやるぜ!!」 鼻息を吹き出し、戦闘意欲見せたジャイアン。 しかし、その作戦がまたまた地味なものと知ると ジャイアンのテンションは急降下してしまった。 一方、自然公園には決戦の時を待っているドラえもん達の姿があった。 ドラえもん「静かだね……。」 嵐の前の静けさにドラえもんが呟く。 すると、コガネの方から例によってアンノーン達がやってきた。 後少しで隊列をなした連中がゲートを越えてくるらしい。 スネ夫「アカネさん達は手筈通りにやってるかい?」 アンノーン達はイエスという文字を作る。 スネ夫「分かった。 後は突入合図を頼むよ。 奴らがゲートを越えきったら作戦開始だ。」 アンノーン「了解。」 アンノーンは了承すると、またコガネの方へ飛び去ってしまった。スネ夫「本当はてきおうとうを使うのがベストだったんだけどな……」 スネ夫が呟く。てきおうとうの電池は切れてしまっていた。 ドラえもん「緊張するね…。」 ドラえもんが呟く。 のび太「大丈夫だよ! 準備はしたんだし。」 のび太は突入用のフーディンを繰り出し、元気よく答える。 のび太にとっても、ここは上手くいかせなくてはならない。 のび太の策を成立させる為にも。 しかし、緊張のためか、やはり場を沈黙が支配する。 すると、別のグループのアンノーンがやってきた。 アンノーン「奴らがゲート越え始めた!」 次へ
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のび太 職業:キング・ブラッドレイの養子、ホムンクルス 説明 キング・ブラッドレイ夫婦の養子(原作通りなら) ハガレンでのプライドポジション。本多透にブラッドレイの子が出来たことをお父様に報告している 顔芸が達者